頭の中で様々な状況を組み立てては、登場人物の心理に思いを馳せるのが作家シドニーの癖だった。空想の中で妻を殺すことさえ一再ならずあったが、当の妻が失踪したのを端緒に、周囲は彼に疑いの目を向け始める。それを助長するような挙動が災して、シドニーは徐々に追いつめられていった……心理の葛藤を描く女史の代表作!
パトリシア・ハイスミス
1921年アメリカ、テキサス州生まれ。1950年刊行の第一長編『見知らぬ乗客』がアルフレッド・ヒッチコックの手で映画化され、一躍有名作家となる。1955年刊行の『太陽がいっぱい』でフランス推理小説大賞を、1964年刊行の『殺意の迷宮』で英国推理作家協会(CWA)賞を受賞した。短編の形でも数多くの傑作を発表し、サスペンス、クライムストーリイの巨匠として現在も世界中に読者を得ている。2022年には著者の執筆経験に基づく小説指南者である『サスペンス小説の書き方 パトリシア・ハイスミスの創作講座』がフィルムアート社から邦訳刊行され話題となった。1995年没。
深町眞理子
(フカマチマリコ )1931年生まれ。1951年、都立忍岡高校卒業。英米文学翻訳家。主な訳書に、ドイル《シャーロック・ホームズ》シリーズ、ギャスケル《アトランの女王》全3巻、オールディス『グレイベアド』、エラリー・クイーン編『ミニ・ミステリ傑作選』など多数。