吾輩はヴァルモンである。パリ警察ではひとかたならぬ働きをしたが、ロンドンから来た長身の私立探偵(敢えて名を伏す)も絡んだ一件の責めを負わされ、あっさり馘首。ふむ、陽春白雪の曲に和する者少なしとはよく言ったものだ。余生は悠々自適と洒落てもよかったが、事件のほうで吾輩を放してはくれぬ。従って、霧の都でも依頼人の要望に応える日々。本書でその一端を明かそう。訳者あとがき=田中鼎/解説=日暮雅通
「〈ダイヤの頸飾り〉事件」
「爆弾の運命」
「手掛かりは銀の匙」
「チゼルリッグ卿の遺産」
「放心家組合」
「内反足の幽霊」
「ワイオミング・エドの釈放」
「レディ・アリシアのエメラルド」
「シャーロー・コームズの冒険」
「第二の分け前」
ロバート・バー
スコットランド、グラスゴー生まれ(1850―1912)。4歳でカナダへ移住。教職の傍らルーク・シャープ名義で執筆を始める。新聞社勤務を経て、英国で月刊誌「アイドラー」を創刊。天性の創造力と諧謔趣味に彩られた多くの作品を書いた。〈クイーンの定員〉#35の『ヴァルモンの功績』及び世界最初期のホームズものパロディは、ミステリ史に大きな足跡を遺す。