恩人である兄に付き従ううち、銀行強盗に加担することになった西部の少女。服役中の父親と暴力的な継父の間で苦悩する少年。根拠薄弱な治療の果てに母親が病死し、医者への復讐心に囚われた双子の妹──。秩序なき犯罪と暴力の渦中で、血まみれになりながらも生きる人々の息遣いが、気高く、美しく描き出される。O・ヘンリー賞受賞作を含む全10編、凄絶な迫力を放つ傑作短編集! 訳者あとがき=高山真由美/解説=杉江松恋
「よくある西部の物語」
「アデラ」
「思いがけない出来事」
「外交官の娘」
「オリンダ・トマスの人生における非凡な出来事の奇妙な記録」
「ジェイムズ三世」
「蜻蛉(スネーク・ドクターズ)」
「死を悼(いた)む人々」
「認識」
「われらはみなおなじ囲いのなかの羊、あるいは、何世紀ものうち最も腐敗した世界(オ・セキユラム・コラプテイシマム)」
シャネル・ベンツ
カリブ海東部のアンティグア・バーブーダにルーツを持つ作家。現在はシラキュース大学で教鞭をとる。2014年、短編「よくある西部の物語」でO・ヘンリー賞を受賞。同作収録の本書はデビュー短編集であり、〈サンフランシスコ・クロニクル〉の2017年ベスト・ブックの一冊、同年の〈エレクトリック・リテラチャー〉の最優秀短編集15の一冊などに選ばれた。その他の著作に長編The Gone Dead(2019)がある。