私立探偵マーロウは、ある弁護士からひとりの女を尾行し宿泊先を報告せよと依頼される。目的は知らされぬままに女を尾(つ)けるが、彼女は男につきまとわれ、脅されているらしい。ホテルに着いても、状況は変わらない。マーロウは依頼主の思惑とは無関係に、女の秘密をさぐり始める。『長い別れ』に続く、死の前年刊行の名作。伝説的名台詞が胸を打つ新訳決定版! 解説=堂場瞬一
レイモンド・チャンドラー
1888年、アメリカ合衆国シカゴ生まれ。両親の離婚後、母親とともにイギリスに渡り、ロンドンのパブリック・スクールで教育を受ける。英国籍を取得し、海軍省勤務、新聞記者を経て、1912年にアメリカに戻る。第一次世界大戦後に小説を書き始める。1933年に〈ブラックマスク〉誌に「脅迫者は射たない」を発表したのを皮切りに執筆活動に専念。1939年に発表した長篇第一作『大いなる眠り』は、フィリップ・マーロウものの第一長篇でもある。同書並びに『さらば愛しき女よ』、『長い別れ』はチャンドラーの傑作長篇として名高い。1959年没。
田口俊樹
(タグチトシキ )1950年生まれ、早稲田大学第一文学部卒。英米文学翻訳家。主な訳書、D・ハメット「血の収穫」、R・マクドナルド「動く標的」、R・チャンドラー「長い別れ」、B・テラン「その犬の歩むところ」、L・ブロック「死への祈り」他多数。