ある老人ホームの一夜。八人の老人と一人の寮母。食事と作業とお楽しみ会……。体力も知力も異なる八人の老人たちと寮母に、時は等しく流れる。登場人物九人の同時進行小説。同じ場面のそれぞれの行動、意識(があれば、だが)が、各人に割り当てられた章の同じページ、同じ行に浮かび上がる。傑作実験小説! 解説=若島正
B・S・ジョンソン
1933年、イギリス、ロンドン生まれ。ロンドン・キングズ・カレッジ卒業。デビュー作でT・S・エリオットに認められ、グレゴリー賞を受賞。その後、次々に実験小説風の作品を発表し、三作目の『トロール』でサマセット・モーム賞を受賞。ジョイス、ベケットの後継者として脚光を浴びた。創作活動は、小説のみにとどまらず、戯曲や詩にも及ぶ。映画・TV作品も手がけ、自ら監督も務めた。1968年には、世界短編映画祭でグランプリを受賞。73年、ロンドンの自宅で自死。
青木純子
(アオキジュンコ )1954年東京生まれ。早稲田大学大学院博士課程満期退学。訳書に、K・モートン『忘れられた花園』、M・パヴィチ『風の裏側』、L・ノーフォーク『ジョン・ランプリエールの辞書』、B・S・ジョンソン『老人ホーム』、G・アデア『閉じた本』、A・クルミー『ミスター・ミー』、K・アトキンソン『世界が終わるわけではなく』、M・レヴィツカ『おっぱいとトラクター』他。