やむを得ない事情で、殺し屋の遺体運搬係となった日置学。浅木というその男の指示のもと、遺体を見捨てられた別荘地の奥に埋めてきたが、そこもそろそろ手狭だという。裏社会では、学の祖母の出身地にある山に遺体をこっそり処理できるという噂があり、浅木に命じられた学は恋人の夢花と共に、祖母が六十年以上前に出たきりの山奥の集落を訪れるが……。集落の神社で祀られている山の頂では、御神体とされる巨石と地面に刺さる無数の風車が異様な雰囲気を纏い二人を誘う。一度は東京に戻った二人だが、山に心を囚われた夢花を救うために学は再び彼の地に向かう。
朝倉宏景
(アサクラヒロカゲ )1984年東京都生まれ。東京学芸大学卒。2012年『白球と爆弾』(13年の単行本刊行時に『白球アフロ』に改題)で第七回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞しデビュー。18年『風が吹いたり、花が散ったり』で第二十四回島清恋愛文学賞受賞、22年『あめつちのうた』で第一回ひょうご本大賞受賞。近著は『サクラの守る街』『ゴミの王国』。