なにか、おかしい。壁にかかったこの写真も、愛読したベッドの上のこの本も、覚えてるのとは違ってる。まるで記憶が二重になってるみたい。そう、ことの起こりはたしか十歳のとき。近くのお屋敷でお葬式があって、その席に迷い込んでしまった。そこで出会ったのがリンさん。ずっと年上なのになぜか仲よくなって、それから……なにかとても恐ろしいことが起こりはじめた。失われたときを求める少女の愛と成長をつづる現代の魔法譚。本文挿絵=後藤啓介
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
1934年ロンドンに生まれ、オックスフォード大学で学ぶ。3人の子どもを育ててから本格的な執筆活動を始めた。『魔女と暮らせば』(徳間書店)でガーディアン賞を受賞。現代のイギリスを代表するファンタジー作家として高い評価を受けている。邦訳された作品には、他に『わたしが幽霊だった時』『九年目の魔法』『バビロンまでは何マイル』『ダークホルムの闇の君』『うちの一階には鬼がいる!』(以上創元ブックランド)『詩人(うたびと)たちの旅』『聖なる島々へ』『呪文の織り手』『呪文の織り手』(以上創元推理文庫)、『魔法使いハウルと火の悪魔』『魔法使いはだれだ』(以上徳間書店)などがある。2011年歿。
浅羽莢子
(アサバサヤコ )1953年生まれ。英米文学翻訳家。東京大学文学部卒。主な訳書にセイヤーズ『学寮祭の夜』、チャーチル『ゴミと罰』、マクラウド『納骨堂の奥に』、キャロル『死者の書』、ピーク『ゴーメンガースト』など多数。2006年歿。