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続々・桜庭一樹 読書日記
【第2回】(1/2)
2008年5月
桜庭一樹

倉橋由美子の赤い全集!
【桜庭一樹写真日記◎倉橋由美子の赤い全集!】 もらった! なんと! 帯付き……。さっそくフンフン読んでるけれど、8巻に入ってる「マゾヒストM氏の肖像」が、ジキル博士とハイド氏を換骨奪胎しつつ倉橋テイストで、テーマがSMで、でもポオみたいでもあり、なんだかわからないけど超おもしろい!(ところで今月の日記は、重ための新作を書いてる途中なのでちょっと真面目な感じになりました…)(桜庭撮影)

 ――物語の結果すべてを決める絶対権力を握った存在、つまり神でもある小説家は、いかにして贖罪を達成できるのだろうか?

――『贖罪』

 5月の頭。
 ゴールデンウィークの後半である。
 近所のエロいカフェで、白目をむいて、薄いアイスラテをすすっている。オープンカフェで仕事するにはちょうどいい季節で、ほどよくあったかく、周りに人気がなく、それにしても今年もこの店のアイスラテは水っぽいなー、もぅっ……。
 ストローでかき回しながら仕事用のノートに目を落としたら、ふっと、去年のいまごろもこの同じ店で(席はちょっとちがうけど)白目をむいてこれを飲んでたな、と思いだした。
 去年のゴールデンウィーク、『私の男』の最終回を書き終えてここでグッタリしてたんだった……。
 あれからようやく一年かぁ、と遠い目になる。
 ずいぶんばたばたした一年だったけど、ようやくまた、篭ってひたすら小説を書く、といういつも通りの生活にもどれたのでほっとしている。家で小説を書いてる毎日が、たいへんだけど、ほんとうに楽しい。
 4月9日からずっと篭りきりだけど、そういえば月末に一回だけ、新刊『荒野』のポスターの写真を撮るので外に出かけた。着物を着るシーンがよく出てくる本なので、「そういえば、祖母と母が買った着物が3枚あって、あと1枚、着てないのが残ってる(〈トップランナー〉と授賞式で着た)」「じゃあそれを送ってもらいましょうか」という話になった。さっそく実家に連絡すると、

母「じゃ、着物2枚と、どれを合わせるかは趣味もあるから、帯は4本ぐらい送るわね」
わたし「うん。えっ、着物2枚?(ふ、増えてる……?)」

 祖母と母が、着物を買い続けてるような気がしてものすごくドキドキした。と、しばらくして文春の担当S藤女史から連絡があり、

S藤「お着物、会社に届きました〜。着物4枚と、帯が6本。いまこっちで選んでます〜」
わたし「はい。えーっ、4枚!?(増えてる!)」

 ポケットの中のビスケットみたいに、着物が増え続けている。ものすごくドキドキしながら実家に聞いてみると、「むかし一回だけ着たのもついでに入れといた」と言われたので、ホッと胸を撫で下ろす。結局、40年近く前に祖母が母に買ったけど一回しか着てないやつを着て、ポスターの写真を撮った……と、いうような騒ぎがあった。



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