地球出身の最下級魔法管理官ルパート・ヴェナブルズは、内心うめき声をあげた。前ユーゴと北アイルランドの平和のために奔走して帰ったばかりだというのに、今度は担当世界のひとつコリフォニック帝国の非公式の法廷への立ち会いだ。
いやなことは重なるもので、家に戻った途端、マジドの師スタンが死にかけているという。スタンが死ぬとルパートは候補者名簿のなかから、新しいマジドを選ばなければならない。
おまけに、コリフォニック帝国では、皇帝以下ほとんどの高官、妃、魔術師がまとめて暗殺され、肝心の後継者がどこにいるのか誰も知らないらしい。
ルパートは、てんやわんやのコリフォニック帝国と、地球での新人マジド選び、ふたつの世界での難題を同時に抱え込むはめに……。
新人マジド選びは難航を極めた。力の交点がある街に候補者を一個所に集める術を施したのはいいが、そこはなんとファンタジーの大会のまっただ中。おまけに候補者たちはみなひと癖ある人物ばかり。あろうことか、いったん候補から外したはずのとんでもない女の子マリーまでなぜか現れて事態はいっそう混乱する。
一方、コリフォニック帝国の帝位継承者捜しも一筋縄ではいかない。苦労の末にやっと居場所を突き止めたと思いきや、途端に邪魔が入る始末。
幽霊となったスタンの助けを借りて孤軍奮闘する下級マジドのルパート。鍵をにぎるのはマジドの極秘事項のひとつ「バビロン」。
英国ファンタジーの女王が贈るとびきり愉快な物語。『花の魔法、白のドラゴン』(徳間書店刊)の前日譚にあたります。
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