天文部合宿の夜、優等生として慕われていた女子高生が殺害されます。その事件を皮切りに女子高で連続殺人が勃発。最初の被害者の妹が探偵役となって事件を解決します。石持浅海さんの最新長編『BG、あるいは死せるカイニス』は、オーソドックスな味わいの謎解きが楽しめる端整な本格ミステリで、『アイルランドの薔薇』や『月の扉』を楽しんだ読者にもおすすめできる快作――なのですが、一点明らかに異色な特徴が含まれています。全人類生まれたときはすべて女性、のちに生物的に強靭な特質を備えている者が男性化するという世界が舞台となるのです。
もともとミステリ・フロンティアは現代日本社会を真向から描いた作品が割合少ないレーベルなのですが(編集意図によってそうなったわけではないのですが)、ミステリ・フロンティア第10回配本作品、またミステリ・フロンティア一周年記念作品ともなる本書は、そういった意味でいかにもミステリ・フロンティアらしい作品とも言えるでしょう。「端整にして破天荒」という一見矛盾したふたつの特徴を兼ね備えた、異色の本格ミステリです。10月に光文社カッパ・ノベルスから刊行された『水の迷宮』と合わせてお楽しみください。
(2004年10月10日/2004年11月10日)
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