海外でも成功しているある女流画家の個展会場、掛けられた一枚の絵の前で、一人の女が騒ぎ失神しかける。この画家が五年前に失踪した自分の夫の居場所を知っているはずだ、というのが彼女の不可解な主張だった。
しかし、画家とその失踪したという彼女の夫に接点はなかった。
五年前の失踪事件は謎に満ちていた。女の夫がいたはずの部屋に残された青酸カリの空き瓶と、青酸カリ入りのワインを飲んだと思われる空のグラス。しかしそこには誰もいないし、誰の死体もなかった。しかもその部屋は密室状況だったのだ……。
そして、その失踪の現場だった家で五年後の今、再び事件が起きた。今度は密室殺人事件! さらに密室殺人はつづく。
『汝、レクイエムを聴け』という問題の絵の中に描かれた不思議な模様に隠された、驚くべき真相とは?
*受賞時のタイトルは「屍の足りない密室」でした。
●同時受賞作・神津慶次朗『鬼に捧げる夜想曲』の紹介を読む
(2004年10月10日)
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