宮部みゆき氏が推薦
P・K・ディック『暗闇のスキャナー』

宮部みゆき氏の推薦文を読む

暗闇のスキャナー  P・K・ディックの作品で最も有名なのは、映画『ブレードランナー』の原作にもなった『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』でしょう。
 しかし最も印象深い作品はと言うと、この『暗闇のスキャナー』を挙げる方が多いのではないでしょうか。宮部みゆき氏のみならず、野崎六助氏も書評集『これがミステリガイドだ! 1988-2000』でディックのベスト作に推しています。
 自らのドラッグ体験を下敷きにした、ディック70年代の傑作。英国SF協会賞も受賞しています。

 どこからともなく供給され、アメリカ中に蔓延する謎のドラッグ“物質D”。覆面麻薬捜査官ボブ・アークター(暗号名フレッド)は、捜査のため自ら“物質D”を服用して中毒患者のグループに潜入し、彼らと日々を共にしていた。だが彼の正体がフレッドであることは捜査官仲間さえ知らない。
 だがある日、彼は上司から命令を受ける。盗聴装置を仕掛けて、アークターという名のヤク中を――彼自身を監視せよと。 彼は諾々とその命令に従うが……。ドラッグによってフレッドの日常は混濁してゆく。

●著者紹介 フィリップ・K・ディック 米/1928〜1982年

 1950年代に短篇作家として出発し、その後長篇を矢継ぎ早に発表、「現代で最も重要なSF作家の一人」と呼ばれるまでになる。ゆるぎない日常社会や他者への不信、崩壊する現実感覚を描きつづけた。日本においてディックの名を一躍高からしめた『虚空の眼』などの初期作から、彼の哲学の集大成とされる晩年の『ヴァリス』に至るまで、今も多くの読者を魅了する。

(2002年3月15日)
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