判型:四六判上製
ページ数:362ページ
初版:2011年3月25日
ISBN:978-4-488-01530-5
Cコード:C0095
装画:建石修志
装幀:柳川貴代
中井英夫や皆川博子の著作に代表される絢爛たる「幻想ミステリ」の数々。読者を惹きつけてやまない物語の真髄を、丁寧に解きほぐしていく──。第一部では幅広く幻想ミステリ全般について論じ、第二部では書き手について考察、第三部では個々の作品について解説するという構成で、作品・作家に深く迫る。それぞれ妖しくも美しい作品たちに魅せられた、ミステリ評論家として第一線で活躍する著者が、端正に織り上げた文章で贈る、渾身の集大成的幻想ミステリ評論集。
はじめに
第一部 昼の顔と夜の顔
・「アンチ・ミステリー」という怪物
・『匣の中の失楽』にはじまる
・昼の顔と夜の顔
・乱反射するイメージの彼方
・日常と幻想のグレーゾーン
第二部 狂気と孤独と愛
・幻の馬車の両輪──中井英夫論
・運命の車輪が逆転する一瞬──赤江瀑論
・狂気と孤独と愛──皆川博子論
・連環する世界の夜のための鎮魂歌──浦賀和宏論
第三部 これより先は不思議の国
・読む「驚異の部屋」──井上雅彦『竹馬男の犯罪』
・ミニアチュールの王国の推理劇──山口雅也『キッド・ピストルズの慢心』
・掌上のヘルメス──吉川良太郎『ペロー・ザ・キャット全仕事』
・どす黒い“邪悪の森”──岩井志麻子『夜啼きの森』
・「死の娯楽化」を読み解く──滝本誠『きれいな猟奇 映画のアウトサイド』
・言葉で築かれた異界──古川日出男『13』
・孤独が蝕む──竹本健治『フォア・フォーズの素数』
・奇人たちの宴──飛鳥部勝則『砂漠の薔薇』
・ポオ直系のゴシック・ワールド──綾辻行人『暗黒館の殺人』
・彼岸の島──恩田陸『ネクロポリス』
・見捨てられた者たちの声なき悲鳴──柄刀一『凍るタナトス』
・ピグマリオン迷宮──加納朋子『コッペリア』
・雪想観の詩人──佐々木丸美『夢館』
・悪夢の舞台裏──矢澤利弘『ダリオ・アルジェント/恐怖の幾何学』
・孤独な異形者の視点からの“三十年戦史”──皆川博子『聖餐城』
・探偵を駆り立てるもの──三津田信三『禍家』
・これより先は不思議の国──日本推理作家協会編『不思議の足跡』
・探偵というマレビト──井沢元彦『猿丸幻視行』
・日常と地続きの怪異──若竹七海『バベル島』
・禁忌の境界線──沼田まほかる『九月が永遠に続けば』
・フェイクとしてのモダン・ゴシック──篠田真由美『すべてのものをひとつの夜が待つ』
・累卵の時空間──道尾秀介『向日葵の咲かない夏』
・終末観とトリック──北山猛邦『「アリス・ミラー城」殺人事件』
・織姫の年代記──森谷明子『七姫幻想』
・過剰な論理、過剰な恐怖──三津田信三『厭魅の如き憑くもの』
・巨匠が残した謎──松本清張『黒い空』
・悪因縁のアラベスク模様──ヒュー・ウォルポール『銀の仮面』
・不安の詩神──ヘレン・マクロイ『歌うダイアモンド』
・アウトサイダーへの憐れみ──シオドア・スタージョン『輝く断片』
・夢界の感情と論理──レイ・ブラッドベリ『黄泉からの旅人』
・秘教ミステリの時代──ダン・ブラウン『天使と悪魔』
・女郎蜘蛛の都──ジェフリー・フォード『シャルビューク夫人の肖像』
・妄想対妄想──ギジェルモ・マルティネス『ルシアナ・Bの緩慢なる死』
あとがき
千街晶之
(センガイアキユキ )ミステリ評論家。1970年北海道生まれ。立教大学卒。95年「終わらない伝言ゲーム――ゴシック・ミステリの系譜」で第2回創元推理評論賞を受賞。2004年『水面の星座 水底の宝石』で第4回本格ミステリ大賞、第57回日本推理作家協会賞をダブル受賞。