一九二五年、二重帝国崩壊後のウィーン。大戦時に両シチリア連隊を率いたロションヴィル大佐は、娘のガブリエーレとともに元トリエステ総督の催す夜会に招かれた。その席で彼は、見知らぬ男から、ロシアで捕虜となって脱走した末、ニコライ大公に別人と取り違えられたという奇妙な体験談を聞く。そして宴もお開きとなるころ、元両シチリア連隊の将校エンゲルスハウゼンが、邸宅の一室で首を捻られて殺害される。そして六日後、事件を調べていた元連隊の少尉が行方不明となり……。第一次世界大戦後を生き延びた兵士たちが、なぜ今“死”に見舞われるのか。謎に次ぐ謎の果て、明らかとなる衝撃の真相とは。訳者あとがき=垂野創一郎
垂野創一郎
(タルノソウイチロウ )1958年香川県生まれ、東京大学理学部卒。訳書にグロラー『探偵ダゴベルトの功績と冒険』、ペルッツ『最後の審判の巨匠』『夜毎に石の橋の下で』『ボリバル侯爵』、共訳書にコリア『ナツメグの味』などがある。