■ 第30回配本(2007年1月刊)
『少年検閲官』北山猛邦
何人も書物の類を所有してはならない。もしもそれらを隠し持っていることが判明すれば、隠し場所もろともすべてが灰にされる。僕は書物というものがどんな形をしているのかさえ、よく知らない――。
旅を続ける英国人少年のクリスは、小さな町で奇怪な事件に遭遇する。町中の家々に赤い十字架のような印が残され、首なし屍体の目撃情報がもたらされるなか、クリスはミステリを検閲するために育てられた少年エノに出会うが……。書物が駆逐されてゆく世界の中で繰り広げられる、少年たちの探偵物語。メフィスト賞作家の新境地!
北山猛邦(きたやま・たけくに)
1979年生まれ。2002年、『「クロック城」殺人事件』で第24回メフィスト賞を受賞してデビュー。機械的トリックの案出に強いこだわりを持つ一方、世紀末的かつ叙情的な独自の作品世界を構築し、若手本格ミステリ作家として将来を期待されている。他の著作に『「瑠璃城」殺人事件』『「アリス・ミラー城」殺人事件』『アルファベット荘事件』がある。 |
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■ 第29回配本(2006年12月刊)
『ハンプティ・ダンプティは塀の中』蒼井上鷹
鉄扉の閉まる重い音がした。七月某日午後三時ちょい過ぎ。おれが外の自由な世界から締め出された瞬間だった。――第一留置室の新入りとなったワイは、そこで四人の先客と出会う。デンさん、ノブさん、ハセモトさん、そしてマサカさん。案外みんなから親切に扱ってもらっているうち、ワイはハセモトさんが逮捕された事情を聞くことになり――(第一話「古書蒐集狂は罠の中」)
第一留置室で繰り広げられるおかしな謎解き合戦。必ず最後に真相に辿り着くのは、誰よりも胡散臭いマサカさん!? 留置場版日常の謎(?)など愉快な五編を収録した連作ミステリ。
蒼井上鷹(あおい・うえたか)
1968年千葉県生まれ。2004年、「キリング・タイム」で第26回小説推理新人賞を受賞してデビュー。同年発表の受賞第一短編「大松鮨の奇妙な客」で早くも日本推理作家協会賞にノミネートされる。05年、前記二作品を収録した作品集『九杯目には早すぎる』を刊行し、06年には初長編『出られない五人』を発表。豪快などんでん返しを仕掛けた作品や端正な謎解きもの、オチ勝負のアイデア・ストーリーなどを書き分け、久々に登場した短編ミステリの名手として嘱望されている。本書は著者初の連作。著作は他に『二枚舌は極楽へ行く』がある。 |
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■ 第28回配本(2006年10月刊)
『夏の魔法』北國浩二
さよなら、残酷な世界。わたしの人生は、もうすぐ終焉を迎える――二十二歳の老婆は、少女の頃の輝かしい思い出に満ちた南の島で、人生最後の夏を静かに過ごすはずだった。しかし彼女はそこで、逞しく聡明な青年に成長したかつての初恋の相手と再会する。劇的な容姿の変化のため、中学時代に恋した相手が目の前にいることに気づかない彼の隣には、美貌の女性が明るい笑顔を浮かべて立っていた――「魔法」は、彼女たちに何をもたらしたのか?
緑濃い真夏の島でゆっくりと進行する、哀しい願いの物語。
北國浩二(きたくに・こうじ)
1964年大阪市生まれ。フリーライターとしての活動を経て2003年、『ルドルフ・カイヨワの憂鬱』で第5回日本SF新人賞に佳作入選。同長編は改稿ののち05年に刊行され、近未来を舞台とした謀略探偵小説として高く評価される。第2長編である本書はまったく作風を変えた野心作。ジャンルの垣根を軽やかに飛び越える自由なスタンスと抜群のリーダビリティとで、今後の活躍が期待される新鋭である。 |
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■ 第27回配本(2006年9月刊)
【第7回本格ミステリ大賞受賞作】
『シャドウ』道尾秀介
人間は、死んだらどうなるの?――いなくなるのよ――いなくなって、どうなるの?――いなくなって、それだけなの――。その会話から三年後、凰介の母はこの世を去った。父の洋一郎と二人だけの暮らしが始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。夫の職場である医科大学の研究棟の屋上から飛び降りたのだ。そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが……。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真相とは? 話題作『向日葵の咲かない夏』の俊英が新たに放つ巧緻な傑作!
道尾秀介(みちお・しゅうすけ)
1975年東京都生まれ。2004年、長編『背の目』で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞。05年に発表した第2長編『向日葵の咲かない夏』で第6回本格ミステリ大賞候補、短編「流れ星のつくり方」で第59回日本推理作家協会賞候補に選出され、一躍脚光を浴びる。物語性豊かな作品世界の中に伏線や罠を縦横に張り巡らせる巧緻な作風を持つ、ミステリ界最注目の俊英。著作は他に『骸の爪』がある。 |
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■ 第26回配本(2006年9月刊)
『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』大崎梢
以前成風堂にいて、今は故郷に帰り、地元の老舗書店に勤める元同僚の美保から、杏子のもとに一通の手紙が届いた。勤務先の宇都木書店、通称「まるう堂」に幽霊が出るようになり、店が存亡の危機に立たされている、ついては名探偵のアルバイト店員を連れて助けに来い、というのだ。杏子は気が進まぬながら、多絵を伴って信州の高原へと赴く。そこで待ちかまえていたのは、四半世紀ほど前に弟子の手で殺されたという老大作家の死に纏わる謎であった……! 「本の雑誌」二〇〇六年上半期ベストテンの堂々第二位に輝いた『配達あかずきん』で今もっとも注目を集める著者、初の長編推理小説!
大崎梢(おおさき・こずえ)
東京都生まれ。神奈川県在住。『配達あかずきん』でデビュー。 |
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■ 第25回配本(2006年8月刊)
『樹霊』鳥飼否宇
植物写真家の猫田夏海は北海道の撮影旅行の最中、「神の森で、激しい土砂崩れにより巨木が数十メートル移動した」という話を聞き、日高地方最奥部の古冠村へ向かう。役場の青年の案内で夏海が目にしたのは、テーマパークのために乱開発された森だった。その建設に反対していたアイヌ代表の道議会議員が失踪する。折しも村では、街路樹のナナカマドが謎の移動をするという怪事が複数起きていた。三十メートルもの高さの巨樹までもが移動し、ついには墜落死体が発見されたとき、夏海は旧知の〈観察者〉に助けを求めた!
〈観察者〉探偵・鳶山が鮮やかな推理を開陳する、謎とトリック満載の本格ミステリ!
鳥飼否宇(とりかい・ひう)
1960年福岡県生まれ。九州大学理学部卒。2001年、『中空』で第21回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞してデビュー。『非在』『密林』などの〈観察者〉探偵・鳶山シリーズを書き継ぐ一方、『昆虫探偵』『本格的』『痙攣的』のような異色作を発表し、個性的な書き手として近年さらに評価が高まっている。著作は他に『太陽と戦慄』『逆説探偵』『激走 福岡国際マラソン』などがある。 |
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■ 第24回配本(2006年8月刊)
『八月の熱い雨 便利屋〈ダブルフォロー〉奮闘記』山之内正文
母のスミエに紹介されて、向かった先は風格のある寄せ棟造りの立派なお屋敷。そこで泉水を待っていたのは、一人暮らしの優雅な老婦人と、気のよさそうな通いの家政婦だった。亡き夫が残した本を朗読してほしいという老婦人の依頼に悪戦苦闘する泉水は、この屋敷に頻繁に無言電話がかかってきていることを知る。裏には怪しい少年たちの存在が? (第三話 八月の熱い雨)
ひとりで便利屋〈ダブルフォロー〉を営む青年・皆瀬泉水が出会う奇妙な謎と、依頼人たちの悲喜交々の物語。小説推理新人賞受賞作家が放つ、ハートウォーミングな連作集。
山之内正文(やまのうち・まさふみ)
1955年宮崎県生まれ。2001年、「風の吹かない景色」で第23回小説推理新人賞を受賞してデビュー。同年発表の受賞第一短編「エンドコール メッセージ」で早くも日本推理作家協会賞にノミネートされる。02年、前記二作品を収録した作品集『エンドコール メッセージ』を刊行し、04年には初長編『青い繭の中でみる夢』を発表。人間の哀しみや脆さを、厳しくも温かな視点で描き注目される。本書は著者初のシリーズもの。 |
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■ 第23回配本(2006年5月刊)
『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』大崎梢
「いいよんさんわん」――近所に住む老人に頼まれたという謎の探求書リスト。コミック『あさきゆめみし』を購入後、失踪した母の行方を探しに来た女性。配達したばかりの雑誌に挟まれていた盗撮写真……。駅ビル内の書店・成風堂書店を舞台に、しっかり者の書店員・杏子と、勘の良いアルバイト店員・多絵のコンビが、さまざまな謎に取り組んでいく。初の本格書店ミステリ、第1弾!
大崎梢(おおさき・こずえ)
東京都生まれ。神奈川県在住。 |
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■ 第22回配本(2006年4月刊)
『出口のない部屋』岸田るり子
私に差し出されたのは「出口のない部屋」という題名の原稿。
「読ませていただいてよろしいですか?」
彼女はロボットのように無表情のままに頷いた。
それは、一つの部屋に閉じ込められた二人の女と一人の男の物語だった。なぜ、見ず知らずの三人は、この部屋に一緒に閉じ込められたのか? 免疫学専門の大学講師、開業医の妻、そして売れっ子作家。いったいこの三人の接点はなんなのか? 三人とも気がつくと赤い扉の前にいて、その扉に誘われるようにしてこの部屋に入ったのだった。そして閉じ込められた。
『密室の鎮魂歌(レクイエム)』で第14回鮎川哲也賞受賞の岸田るり子が鮮やかな手法で贈る、受賞第一作。
岸田るり子(きしだ・るりこ)
1961年京都市生まれ。魚座。パリ第七大学理学部卒業。2004年に『密室の鎮魂歌(レクイエム)』で第14回鮎川哲也賞を受賞。訳書に、ブルーノ・ラトゥール『細菌と戦うパストゥール』(共訳)がある。好きな動物:猫。 |
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■ 第21回配本(2006年4月刊)
『インディゴの夜 チョコレートビースト』加藤実秋
深く蒼い夜の似合う街・渋谷。近頃女の子たちの話題を集めているのは、一風変わったホストクラブ〈club indigo〉。スタイリッシュで魅力的なホストが揃うこの店には、今日も厄 介な事件が持ち込まれる――。
連続ホスト襲撃事件、失踪した編集者、飲食店強盗、ホストコンテストを巡る陰謀……、ストリートで起こるさまざまな事件に、indigoのホスト探偵団が挑む!
『インディゴの夜』でおなじみの個性豊かなホストたちが、夜の街を軽やかに駆けめぐる新世代探偵小説。
加藤実秋(かとう・みあき)
1966年東京都生まれ。2003年、ホストクラブを舞台としたミステリ「インディゴの夜」が選考委員各氏に絶賛され、第10回創元推理短編賞を受賞。2005年「インディゴの夜」を含む連作集『インディゴの夜』を発表し、若者の“いま”を描写したスタイリッシュでテンポのよい作風が話題となる。
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