カーネギー賞受賞、みなしごの少女が語る英雄の真実

アーサー王ここに眠る
フィリップ・リーヴ/井辻朱美訳(2009年4月刊)

 伝説の英雄アーサーの真の姿。みなしごの少女が語る哀しくも美しい感動の物語。

 カーネギー賞受賞の傑作ファンタジー

 ブリテン島、紀元五百年頃。
 ひとりの司令官に率いられた、荒々しい騎馬の男たちの集団が館を襲い火を放った。燃えさかる館から、命からがら逃れたみなしごの少女グウェナは、奇妙な風体の男に救われる。
 鷹のような風貌のその男の名はミルディン。ブリテン島の統一を目指す司令官、アーサーに仕える吟遊詩人。言葉を巧みにあやつり、人々の心を手玉に取る不思議な男。グウェナはミルディンのもとで、彼の企みに手をかすことになる。
 ブリテンの司令官アーサー、吟遊詩人ミルディン、王妃グウェニファー、湖の精からあたえられた魔法の剣カリバーン……霧の彼方から伝説の数々が姿をあらわし、命を得て動き出す。
 アーサー王伝説を新たな視点から語りなおした傑作。

 著者フィリップ・リーヴは1966年英国生まれ。イラストレータとして活躍していたが、子どものころに読んだ物語が忘れられず、自分でも書きはじめた。
 処女作『移動都市』は、英国ブックトラスト主催のネスレ・スティーマーズ賞など、いくつもの賞を受賞、日本でも星雲賞を受賞した。この〈移動都市シリーズ〉は現在2巻目『略奪都市の黄金』までが、創元SF文庫から刊行されている。
 さらに同シリーズ4巻目A Darkling Plain(2006)は、カーネギー賞同様に英国の権威ある児童文学の賞のひとつであるガーディアン賞を受賞しており、リーヴは、この『アーサー王ここに眠る』でカーネギー賞を受賞したことで、押しも押されもしない、児童文学の名手と認められたことになる。
(2009年3月5日)