電話セールスで“殺人”を聞いちゃった!?
ますますパワフル、転職ミステリ第3弾

おかけになった犯行は
エレイン・ヴィエッツ/中村有希訳

 大好評〈ヘレンの崖っぷち転職記〉第3弾の登場です。
 第1作『死ぬまでお買物』では超高級ブティック、第2作『死体にもカバーを』では新刊書店と、職場を転々としてきたヘレンですが、第3作となる本書『おかけになった犯行は』では、電話セールスで収入を得ています。

 人の都合も考えず、いきなりかかってくる電話セールスが悩みの種なのは、日本でもアメリカでも事情は同じようですが、本書を読めば、電話をかけてくる側の事情もうかがい知ることができます。ほぼ誰からもいい顔をされずにストレスを溜めていくセールス員たちの苦労を知れば、電話での応対が少しは変わってくるかも……(とはいえ、実際に商品を購入するかどうかは、あくまで慎重に考えたうえ、自己責任でお願いします)。
 しかし、ヘレンを襲う災難は(今回も)仕事上のものだけではありません。たまたま電話をかけた相手先で、“殺人事件”が起きるところを目撃ならぬ“聞き撃”してしまうのです。ところが、通報を受けた警察が駆けつけてみると、“現場”には死体どころか事件のあった痕跡ひとつなく、ことはヘレンの勘違いで済まされてしまいます。
 前2作をお読みのかたならご承知のとおり(本書でも事情は説明されますので、ここから読んでもだいじょうぶ)、ワケありのヘレンはいったん引き下がりますが、やはり自分の勘違いとは思えず、みたび素人探偵として起きたはずの“殺人”の真相を解明するため立ち上がります。

 アパートに越してきた新たな住人に悩まされたり、またまたまた新たな恋のお相手が現れたりと、ヘレンの周囲でも見過ごせない事件が起こりますが、彼女はあくまでがんこに真相を追うのでした。調査の過程で知り合った“押しかけ相棒”(この人の強烈なこと!)との、文字どおり身体を張った大捜査の結末は!? ますますパワフル、ますますにぎやかになった痛快転職ミステリ第3弾にご期待ください。

 エレイン・ヴィエッツ『おかけになった犯行は』は12月20日刊行予定です。

(2008年12月5日)