幻想の紡ぎ手マキリップのファンタジー
最新巻

茨文字の魔法(2009年1月刊)
パトリシア・A・マキリップ/原島文世訳

●最新刊『茨文字の魔法』(2009年1月刊)


 レイン十二邦を統べる王の宮殿。その下うずくまる地下の王立図書館でネペンテスは育った。捨て子だったが、司書たちに拾われ、めずらしい文字を読み解く仕事をしていたのだ。
 ある日、ネペンテスが魔法学校の学生から預かった一冊の本。そこには互いに巻きついてもつれあう、茨のような謎の文字が綴られていた。ネペンテスは憑かれたように茨文字の解読をはじめる。
 そこに書かれていたのは、かつて世界を征服したという偉大な王と魔術師の古い伝説。
 おりしも前王の死と、年若い新女王の即位に揺れるレイン十二邦は、次第に運命の渦に巻き込まれていく。

 名手マキリップが織りなす、謎と伝説の物語。



●綺羅星のごとき短編集
『ホアズブレスの龍追い人』


「ホアズブレスの龍追い人」
龍が生み出す冬に封じ込められた、黄金と氷の街にやってきた、ひとりの龍追い人。

「音楽の問題」
古い血を誇る大領主のもとに派遣された、若き吟唱詩人がくだす決断。

「トロールとふたつのバラ」
きれいなものに目がない醜いトロールが出合った、世にも美しい白いバラ。

「バーバヤーガと魔法使いの息子」
ロシアの昔話に登場する魔女バーバーヤーガと魔法使いの弟子の若者とのおかしな出会い。

「ドラゴンの仲間」
ドラゴンにさらわれた、女王お気に入りのハープ奏者を捜す五人の女戦士の冒険。

「どくろの君」
砂漠のただなかに建つ塔で、騎士たちの訪れをうける孤独な女、どくろの君。

「雪の女王」
大人になったカイとゲルダの物語。

 ほか「灰、木、火」「よそ者」「錬金術」「ライオンとひばり」「ジャンキットの魔女」「悪い星のもとに生まれて」「心の中への旅」「ヒキガエル」収録。

 いかにも幻想の紡ぎ手マキリップらしい、絢爛たるファンタジー、誰もが知っている昔話や童話のマキリップ版、ちょっと怖い話、心あたたまる話からユーモラスな小品までバラエティに富んだ15の物語。  二度の世界幻想文学賞に輝くマキリップが、綺羅星のごとき15の物語を綴った、不思議と魔法が交錯する贅沢な短編集。



●謎と魔法の物語
『オドの魔法学校』


 両親をはやり病で亡くし、弟にも恋人にも去られ、ひとりぼっちで暮らすブレンダンのもとに、ある日、オドと名のる女巨人が訪れた。まわりじゅうに動物たちをまとわりつかせた不思議な女巨人は、植物の扱いに長けた彼に、都にある魔法学校の庭師になって欲しいと申し出た。
 悩んだ末にオドの求めに応じて魔法学校に行ったブレンダンだったが、故郷とあまりに勝手がちがう都の様に戸惑うばかりだった。一方、自らの魔法の力にまったく無頓着な彼に、魔法学校の教師たちは困惑を隠せない。
 都では、歓楽街“黄昏区”で興行する魔術師ティラミンの噂に、支配者たちが神経をとがらせていた。魔法は国王の名のもとに魔法学校で厳格に管理されているはず。果たして件の魔術師はただの興行師か、それとも本物の魔法使いなのか……。

 魔法の才をもつ青年ブレンダン、魔法学校の教師ヤール、王女スーリズ、魔術師ティラミンの娘ミストラル、黄昏区の警吏監アーネスト……ヌミスの都ケリオールの人々がおりなす魔法のタペストリー。
 幻想の紡ぎ手マキリップの、謎と魔法に満ちた珠玉のファンタジー。

(2008年12月5日)