アセルスタン修道士、三つの謎に挑む
中世英国ミステリ第3弾

神の家の災い
ポール・ドハティー/古賀弥生訳

 14世紀後半の英国を舞台にしたアセルスタン修道士シリーズ、『毒杯の囀(さえず)り』『赤き死の訪れ』に続く、第3弾の登場です。

 本書『神の家の災い』では、アセルスタン修道士とクランストン検死官の名コンビに、いずれも手ごわい3つの謎を解くという試練が与えられます。
 ひとつ目の謎は、摂政ジョン・オブ・ゴーントの招いたイタリア人貴族がもたらした、彼の貴族が所有する館にある〈緋色の部屋〉の謎。長年開かずの間だったその一室には、一夜を過ごした者が非業の死を遂げるという言い伝えがありました。事実、話を聞いて部屋に泊まった四名もの人間が、原因不明の最期を迎えたのです。クランストン検死官は、わずか二週間の期限内に、この謎を解いてみせなければなりません。カーター・ディクスンの『赤後家の殺人』にも通じる、「人を殺す部屋」の秘密とは――
 ふたつ目の謎は、アセルスタン修道士の守る聖アーコンウォルド教会にまつわる謎。教会の改修中に内陣の床下から、身元不明の白骨死体が発見されます。場所が場所だけに、聖人の遺骨なのでは……との噂が広まるなか、遺骨に触れただけで怪我が治ったという者までが現れます。とんだ聖遺物騒ぎに周囲が騒然とする中、アセルスタンは遺骨の正体と、治癒の奇跡の真実を突き止めることができるのか――
 そして三つ目にして最大の謎が、かつてアセルスタンが修行時代を過ごしたドミニコ会の修道院で起きる、神をも恐れぬ連続殺人。おりしも神学者や宗教裁判所の裁判官たちを集めての院内総会がおこなわれているさなか、修道士ばかりが殺されていきます。誰が、なんのために殺人をくり返しているのか――
 探偵コンビの息のあった活躍と、中世英国の猥雑で賑やかな雰囲気、そして謎解きの面白さをあわせて味わえる一冊です。どうぞお楽しみください。

 ポール・ドハティー『神の家の災い』は11月28日刊行予定です。

(2008年11月5日)