お待たせしました! コーンウォールミステリ第4弾!

待ちに待った個展の夜に
ジェイニー・ボライソー/安野玲訳

 イギリス西南部に突き出たコーンウォールという土地をご存知でしょうか? イギリスにしては温暖で風光明媚、南ヨーロッパを思わせる太陽の光と植物。イギリスではリタイアしてから住みたい場所ナンバーワンというほど人気の高いところ。またその光と影を愛してかコーンウォールには芸術家たちも多く移り住んでいます。
 イギリスでも有数の保養地である一方、内陸には荒涼とした岩や灌木ばかりのムーア地帯が広がります。その中に点々と屹立する古代の立石メンヒルやドルメン、ムーアや鉱山の廃坑に今も残る妖精の伝承……
 イギリスの片田舎というなかれ、コーンウォールは一言は語り尽くせない奥深い魅力を秘めた土地なのです。

 さてこの〈コーンウォール・ミステリ〉は、そのコーンウォールを舞台に、夫に死に別れ、画家として自分の道を歩きはじめた魅力的な女性ローズ・トレヴェリアンが、画家ならではの観察眼をいかして身の回りの人々が巻きこまれる様々な事件を解決する人気シリーズ。今回の『待ちに待った個展の夜に』はというと……


●最新刊『待ちに待った個展の夜に』(10月刊)


 念願だったローズのはじめての個展。
 描きためた油絵は、自分で全部額装もして、展示できるばかりになっているし、離れて住んでいる両親も駆けつけてくれる。親しいひとたちだけを招いての、初日のオープニングパーティの準備も万端だ。これで最愛のデイヴィッドさえ生きていてくれれば……。ローズは一抹の寂しさを拭いきれない。
 そんな彼女のもとに、友人のエッダが悩みを相談してきた。ティーンエイジャーの娘と最近うまくいっていないというのだ。
 ところが個展のオープニングの前夜に、エッダの息子が死亡。その死因にはなにやら不審な点があるらしい。
 捜査にあたるのは、ローズの元恋人ピアース警部。だが友人のためとあらば、ローズだって大人しくしているわけにはいかない。ピアース警部や友人たち、そして両親の心配をよそに事件の背後を調べはじめる。
“元”恋人で、いまでもローズに未練たっぷりのピアース警部、どうやらこちらもローズに気があるらしい画商のジェフ・カーター、そして、いつまでたっても報われそうにない永遠のお友だち(!)バリー・ロウと、今回もローズの周辺はにぎやかだ。
 親友のローラにからかわれながらも、「わたしはまだ十七歳の乙女のような気がするし、目の前には未来が広がっていると信じている」というローズ。
 そんな彼女からまだまだ目が離せません。


『クリスマスに死体がふたつ』


 クリスマスを目前にしたコーンウォール。海沿いのプロムナードには美しいイルミネーションが灯され、街はクリスマスの買い物をする人でにぎわっている。イギリスの他の地方に比べると格段に温暖とはいえ、この季節になるとやはりコートが必要だ。
 前巻『しっかりものの老女の死』で、自らの絵の才能を再発見したローズは、いまは廃鉱となっている土地にぽつんと建つ、崩れかけた石造りのエンジンハウスを写生していた。 そこにいきなり響く女の悲鳴。ローズはすぐに警察に電話をしたが、捜索の結果はなにもなし。皆には白い目でみられるし、元恋人のジャック・ピアース警部からまでいやみを言われる始末。
 だが、再度調査をしたピアース警部が、何十年か前に死んだとおぼしき女性の死体を発見するにいたって、様相は一変する。ローズが最近聞いた悲鳴と、何十年も前の死体の関係は? さらに、ローズが最近つきあいはじめた画家ニック・パスコウのかつての恋人が失踪し、事態はややこしいことに……
 今回は油絵を通してローズが新たに友人になった、セント・アイヴスの芸術家たちが事件に巻き込まれる。それどころかローズ自身までもが容疑者のひとりになってしまうのだ。  事件の謎に加えて、ローズの画家としての未来は? 新たな恋の行方は? と今回も盛りだくさん。
 事件とは関係ありませんが、ローズがクリスマスプレゼントとして母親に贈る、コーンウォールの特産品の詰め合わせが今回は必見。豚挽肉のプディング、クロッテッドクリーム、パースティ、ファッジ、サフランケーキ、ジンジャーフェアリングス、ヘヴィケーキ。食べてみたくなりませんか?


『しっかりものの老女の死』


 ローズと仲のよかった、しっかりものの老女ドロシーが死に、警察はそれを自殺と判断。でも友人だったローズには、どうしても納得いかない。ドロシーが自殺などするはずがない!
 老女の相続人は2人の息子。上の息子は結婚してあまり母親のもとへは寄りつかないうえ、嫁は義母をきらっているくせに、財産は狙っているらしい。弟のほうは気が弱すぎて働くこともできず、母親べったりですぐ近くに住んでいる。
 さらに、ドロシーに求婚していた幼なじみの農夫や、なにやら秘密を抱えいそうな食料雑貨店を営む友人、さらには怪しげな骨董商まであらわれて、今回も容疑者には事欠かない。
 しかもドロシーは、かなり高価な絵画や骨董をいくつも所有していた。ローズは、よりによってその高価な絵の1枚が、精巧な写真とすり替えられていることを発見してしまう。  またも事件に首を突っ込む一方、画家としての自分自身の芸術と生き方を模索し始めるローズ。恋人ジャック・ピアース警部との関係に悩み、芸術家たちとの新しい出会いに胸躍らせる彼女の未来やいかに。

 今後のローズの恋と芸術に、乞うご期待!


『容疑者たちの事情』


 ローズはコーンウォールをこよなく愛し、そこに住み着いてしまった女性。
 生粋の土地っ子だった最愛の夫デイヴィッドが死んで4年、仕事(画家が本業、でも食べていけないので写真家もやってます)に打ち込む毎日だ。
 ある日仕事で知り合った、この土地に移ってきてまだ間もない裕福な女性から、ホームパーティのお誘いを受ける。そろそろ新しい生活への第一歩を踏み出してもいいころかもしれない。それなのに、パーティの最中に肝心の女主人が墜落死、それもどうやら事故ではないらしい。おまけにその第一発見者が自分だなんて! 担当の警部は相当に失礼な奴だし、もしかして自分も容疑者扱いされている? 怪しいのは被害者の夫? 息子? それとも夫の不倫相手? 
 ローズはもちまえの好奇心と観察力をフルに発揮、友人たちの心配をよそに次第に事件にのめりこむのだが……。

 推理に、仕事に、恋にと何かと忙しいローズが料理を作る場面も魅力のひとつ。シンプルできどらない、でも美味しそうな料理がいっぱい。思わずワインを飲みたくなってしまうこと請け合いです。コーニッシュパースティや、クロテッドクリーム等、知る人ぞ知るコーンウォール名物もしっかり登場します、お楽しみに。

(2008年9月5日/2008年10月6日)