2009年スタートの裁判員制度を前に、
法廷ミステリの傑作登場!
逆転に次ぐ逆転の法廷劇『十三番目の陪審員』

 2009年5月より施行される裁判員制度。市民が刑事裁判に参加し、有罪・無罪の判断は勿論のこと、量刑の決定まで委ねられるこの制度は、開始を目前にして未だに賛否分かれる論議が続いていますが、いずれにせよ急速に「法廷」や「裁判」が身近になってきたことは事実です。
「法廷」といえばミステリ読者におなじみの、E・S・ガードナーの諸作をはじめ、スコット・トゥロー、ジョン・グリシャム、リチャード・ノース・パタースンらの法廷ミステリや映画『十二人の怒れる男』等で親しんできた方も多いと思います。そして、陪審制あるいは裁判員制度が適用された「日本の法廷」を舞台にしたミステリがあれば、今日の問題もさらに身近に感じられるのでは――ということでお届けするのが、「もし日本に陪審制が復活したら」という前提で書かれた本格法廷ミステリ『十三番目の陪審員』です。

「人工冤罪」――架空の殺人事件を演出し、偽造証拠をばらまいておいてわざと逮捕され、警察の取り調べや法廷の様子を当事者として綿密に取材するという計画を持ちかけられた鷹見瞭一。父が冤罪のため、自殺に追い込まれたという過去を持つ鷹見は、ジャーナリストとしての名声という餌に釣られたこともあり、その無茶苦茶な計画の犯人役を引き受けてしまう。
 DNA鑑定すら欺く偽装を経て、演出された殺人の目撃者まで用意された「架空殺人」は見事成功を収め、鷹見は逮捕された――身に覚えの全くない、現実の強姦殺人事件の容疑者として。
 なぜか証拠は悉く鷹見に不利なものばかり発見され、最終的にはDNAまで犯人のそれと一致する。「人工冤罪」計画のことを訴え続け、半ば狂人扱いされる鷹見に救いの手を差し伸べたのは、数多の不可能犯罪を解決してきた弁護士・森江春策。彼は演出された「架空殺人」の目撃者だった奇縁から、鷹見の弁護を引き受ける。
 関西初となる陪審法廷で裁かれることになった鷹見。検察側はDNA鑑定や多数の物的・状況証拠など、弁護側を絶対不利な状況に追いつめる。森江と検察側の壮絶な攻防の末に明かされる、驚愕のトリックと壮大な陰謀とは?

 エンターテインメントとしても、ミステリとしても磨き抜かれた法廷ミステリの逸品。裁判員制度施行前に是非ご一読を。

(2008年9月5日)