社員数約40名。東京創元社より少しだけ人数の多いミステリの老舗版元・明林書房。その営業部の新人・井辻智紀くんがこの『平台がおまちかね』の主人公です。
出版社の営業マン。何をしているかご存じでしょうか? 書店に営業へ向かうのはもちろん、新刊の部数の検討や、フェアの企画などもやっています。文学賞を主催している出版社なら、パーティーのあれこれにも関わっていたり、実は結構活躍してます。出版社というと編集の仕事がまず浮かぶと思いますが、営業マンの仕事の様子をこの作品を通じてちょっと垣間見ていただければ幸いです。
さてこの主人公の井辻くん。先輩営業マンが編集部に異動になり、彼のあとを引き継いでさまざまな書店へと営業に出かけるのですが、明林の本をたくさん売ってくれていた書店を訪れても、何故か冷たくあしらわれ……。明林主催の文学賞の贈呈式に、受賞者が現れなかったり……。どうにも受難の日々は続くよう。
さらに散々井辻くんのことをからかい、いじる佐伯書店の先輩営業マン・真柴のほかにも、個性的な営業の面々がたくさん登場し作品を彩ります。夢の平台をめざして日々奮闘する井辻くんの、どたばたしつつも、ほっとこころのあたたまるハートフル・ミステリを、どうぞご愛読ください。
*収録作品
平台がおまちかね
マドンナの憂鬱な棚
贈呈式で会いましょう
絵本の神さま
ときめきのポップスター
〈Webミステリーズ!〉に大崎さんの「ここだけのあとがき」が掲載されています。こちらもあわせてお楽しみください。
(2008年6月5日)
|