今回のミステリ・フロンティアは、注目の女流作家の精緻な長編ミステリをお届けします。
じっくりとお楽しみください。
一年前のあの日、妻の香映は自殺してしまった。深い森に抱かれた町で。
心が通じていたはずの彼女の突然の死を未だに受け入れられない洋介は、妻の過去から死の真相を探る決意を固める。
自殺防止のボランティア活動をしていた彼女に、いったい何が起きたのか。
町のあちこちに散らばっている彼女の過去の断片と、怪しげな人々。少しずつ暴かれていく真実は、洋介をあの森へと導く。意外な真実に、洋介は――。
流麗な文章に加えて、舞台となる江戸時代から続く酒蔵の様子が丁寧に描かれます。
著者は、2004年に「紅雲町のお草」で第43回オール讀物推理小説新人賞受賞。コーヒー豆と食器を扱う「小蔵屋」を営む大正生まれのおばあちゃん探偵の活躍を描いた『紅雲町ものがたり』を刊行した新進気鋭の女流作家です。