あのリナ&デッカーが帰ってきた!

正義の裁き
フェイ・ケラーマン/吉澤康子訳

 愛する妻と幼い娘と共に平和に暮らすデッカー。目下の唯一の心配事は、ニューヨークで大学に行っている、前妻との娘のことだった。どうやら娘の周辺で女子大生がレイプされる事件が続発しているらしい。
 苛々を募らせるデッカーのもとに、ホテルの一室で若い女性が殺されているとの知らせが。被害者は高校生活の最後をかざるプロムの夜、友人たちと羽目を外していたらしい。
 デッカーの心の中で、被害者と自分の娘の姿が重なる。そして、捜査線上に浮かんだのは、プロムの夜、被害者と一緒にいた少年クリスだった。

 クリスは謎めいた少年だった。魅力的な容姿、プロなみのチェロの腕前、そしていつも穏やかで抑制された振る舞い。犯罪歴はまったくなく、しかも18歳にして、自分で生計をたてているらしい。
 殺された少女は彼のガールフレンドだったのか。クリスの身辺を調べるうちに、意外な事実が明るみに出る。なんとクリスはマフィアの首領の息子だというのだ。一流の弁護士に護られ、嘘発見機のテストをやすやすとパスしてのける少年。だが、デッカーのある発見がクリスの自制心を突き崩した。

 若さゆえの情熱と、哀しくも歪んだ愛を描く『正義の裁き』、リナ&デッカーシリーズ第8弾。

(2008年4月7日/2008年5月7日)