ユーモアハードボイルドの快作
木野塚氏の活躍を描く、シリーズ第一弾登場!
樋口有介『木野塚探偵事務所だ』

 今年作家生活20周年を迎える著者は、デビュー以来さまざまな作品を刊行してきましたが、現在までのところシリーズ探偵は、弊社で刊行している〈柚木草平シリーズ〉と、今シリーズ〈木野塚佐平シリーズ〉のみ。
 主人公は警視庁を定年退職したての木野塚氏60歳。60歳ながらも男の願望のために、ヘソクリを削って探偵事務所を開いてしまうなんて、果たしてその顛末はいかに。

 木野塚氏は60歳で、無事に警視庁を定年退職した、一見普通のおじさん。しかし、胸のうちに多大なる計画を秘めていた。長年、海外のハードボイルド小説を愛読していた氏は、自身で貯めたヘソクリを元手に探偵事務所の開設を画策していたのだ。リュウ・アーチャーやフィリップ・マーロウのように難事件をいくつも解決し、グラマーな美人秘書と……。そんな夢を見つつも、見合い結婚の奥さんを丸め込み、新宿の裏町でようやく「木野塚探偵事務所」を開設。
 しかし殺人事件や誘拐事件など凶悪事件はおろか、求人広告に載せた秘書への応募もさっぱり来ない。警視庁生活37年とはいっても刑事経験はまったくなく、事件捜査のノウハウもまったくない氏。要は、一般人が定年退職後にいきなり探偵事務所を開くようなもの。果たしてどんな事件に巻き込まれていくのか。そして、憧れの美人秘書はやって来るのか。

 ひょんなところから舞い込んできた依頼を見事解決していく『木野塚探偵事務所だ』に続いて、見事大きな事件に巻き込まれた氏の活躍を描く『木野塚佐平の挑戦だ』が、6月刊行となります。こちらもお楽しみに。

(2008年3月5日)