鬼才による待望のミステリ連作集
精緻な論理と黒い笑いが冴える
『モザイク事件帳』小林泰三

 第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、映画化でも話題になった『玩具修理者』、二年連続日本SF大賞候補作となった『ΑΩ(アルファ・オメガ)』、『海を見る人』など、ホラーおよびハードSFのジャンルで常に高い評価を得てきた小林泰三。ミステリの方面でも、密室の謎と殺人の謎が奇妙に組み合わされた傑作『密室・殺人』、ミステリとしての企みがそれぞれに凝らされた作品集『肉食屋敷』、J・D・カー生誕百周年記念アンソロジー『密室と奇蹟』収録の、『火刑法廷』へのオマージュ作品「ロイス殺し」、『殺人鬼の放課後』の「攫われて」など、ミステリマニアを唸らせる作品群を世に送りだしています。

『モザイク事件帳』では、探偵小説につきものの様々な「お題」をテーマに構成された連作ミステリ短編集です。「犯人当て」「安楽椅子探偵」「日常の謎」などの基本から、「バカミス」「SFミステリ」のように捻りのあるものまで幅広い題材で贈る、鬼才の真骨頂とも言うべき精巧な作品をお楽しみ下さい。ちなみに、毎回入れ替わる探偵たちも、殺人者だったりマッドサイエンティストだったりと、一癖二癖ある人物ばかり。他の小林作品でもお馴染みの面子も登場しますので、気になる方は巻末の登場人物紹介をご参照下さい。

(2008年2月5日)