フード系成長小説の決定版
竹内真
『ビールボーイズ』(2008年2月刊行)

 急逝した祖父の味の謎を求めて従兄妹同士が冒険を繰り広げる『カレーライフ』から7年、新たなフード系成長小説の登場です。
 今回の題材はビール。

 北海道の新山市で暮らす正吉たち12歳の悪ガキトリオは、秘密基地に集った。憧れの茜が市内のビール工場の撤退を機に、転校していってしまうのを惜しんで。茜を転校へと追い込んだ、ビールという飲み物に復讐、つまりは飲むためだ。茜の親友の薫も加わって、6本のビールを飲み干す。思えばこれが、正吉が地ビール造りを目指すきっかけだった――。
 修学旅行の布団部屋で、映画館で、そして居酒屋で、いつも彼らの傍には、ビールがあった。12歳から30歳までの4人の少年たちがビールを通じて、友情に恋にと成長する姿を丹念に描きます。
 少年たちの思いは、いつしかビールを通じた町興しへ。

 ビールの季節には、ちょっと早いですが、爽やかな気分を味わえる傑作です。
ビールの歴史が、詳しく理解できるコラムも付いた、痛快ビール小説をお楽しみください。

※初夏には、初のミステリ連作集『シチュエーションパズルの攻防 珊瑚朗先生無頼控』(創元クライム・クラブ)を刊行予定です。こちらもお楽しみに。

(2008年2月5日)