「本当に不思議な話なんて、
そう簡単に出会えるものじゃない」
謎めいた店で繰り広げられる安楽椅子探偵奇談
太田忠司『奇談蒐集家』

「求む奇談!」この世のものとは思えぬ不思議な体験談、買います。ただし、それが本当に不思議な話であれば……謎めいた新聞広告を目にした人々が携えた摩訶不思議な物語。

 鏡の中に住まう美しい姫君の恋、西洋の都で出会った若き魔術師の予言、邪眼をもつ少年と猫とともに巡る夜の街の冒険など、ささやかな不思議から、人生を変える奇跡まで。多岐にわたる奇談が、謎めいた二人組――奇談コレクター「恵美酒」と、無愛想な美貌の助手「氷坂」の元に持ち込まれる。無邪気に謎を謎として喜ぶ恵美酒だが、その背後で物語に耳を傾けていた氷坂が口を開くや、奇談は一転、種も仕掛けもある“事件”としての全貌を明らかにする!

 アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会』シリーズ、ジェイムズ・ヤッフェの〈ブロンクスのママ〉シリーズを思わせる、魅力的な安楽椅子探偵の活躍と、物語を彩る奇妙で不思議な“奇談”をお楽しみください。

(2008年1月7日)