芸術家村でおきた殺人の謎を追う

狡猾なる死神よ
サラ・スチュアート・テイラー/野口百合子訳

 そのモニュメントはどう見ても奇妙だった。
 舟の中に横たわる若い女の裸体。それを見下ろす死神のまなざしはやさしく、骨のくちびるには愛しげな表情すら漂っている。そして墓の下に葬られた女性は、十八歳の若さでこの世を去っている……。そして、その彫刻を造った彫刻家は不明。
 墓石の芸術という、一風変わったテーマを大学で研究しているスウィーニーは、友人トビーの誘いで、謎に満ちたモニュメントのある、かつての芸術家村ビザンティウムを訪れる。トビーの叔父一家がそこに住んでいて、クリスマス休暇を一緒に過ごそうというのだ。
 奇妙な墓石に惹かれ誘いに応じて村を訪れるスウィニー。だが、画家であった父の自殺、恋人の事故死と、自らの周囲にまつわる死の影に怖じ気づき、友人トビーへの複雑な気持ちに戸惑う。
 そして、墓石の謎を追う彼女の行く手に新たな殺人事件が……。あの奇妙なモニュメントが新たな殺人を呼んだのか。
 芸術家村の過去にいったい何があったのか? 死と象徴に満ちたミステリ『狡猾なる死神よ』、芸術史家スウィーニー・シリーズ第一弾。

(2008年1月7日/2008年2月5日)