『チーム・バチスタの栄光』の俊英が放つ
驚愕のジェットコースター・ノベル!
『夢見る黄金地球儀』海堂尊

 リアリティ溢れる医療現場を舞台に、個性的なキャラクターが繰り広げる人間ドラマと、サスペンスフルな物語が展開する作品群で絶賛を浴した俊英・海堂尊の最新作が、〈ミステリ・フロンティア〉より登場です。舞台となるのは従来の作品でもおなじみの桜宮市。主役は一億円分の金をはめ込まれた直径70センチの地球儀です。

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 1988年、関東の端っこに存在する桜宮市に突如舞い込んだ「ふるさと創生基金」。桜宮市は使い途に迷ったあげくに黄金をはめ込んだ地球儀を制作、新種のホヤとともに水族館の別館に安置した。最初は目新しさから見物客が押し寄せたが、2013年現在、すっかり忘れ去られた存在となっていた――はずだった。が、ある男の帰還とともに、とてつもない厄介事の種へと変貌する。

 平沼平介、30代前半で妻子持ち。かつては物性物理学者の道を志していたが、現在は家業の町工場で営業をにない、発明狂の父に振りまわされつつも名前通りの平凡な日々を送っている。

 しかし、七色のチューリップ帽に上下ジーンズという謎のファッションに身を包んだ旧友の来訪が、彼を大騒動の渦中へとたたき込んだ。8年ぶりに現れた(自称)ガラスのジョーが言い放つ。「久しぶり。ところでお前、一億円欲しくない?」と。

 世直しと称して、世にはびこる悪から利益を奪うという軽犯罪ぎりぎりの悪戯を二人で繰り返した青春時代。なかでも悪徳フィリピンパブからくすねたヴィンテージワイン3本セット〈三姉妹〉のうち1本を取り損ねたことにこだわるジョーは、黄金地球儀を盗んで、こそこそと悪事をはたらく市役所に天誅を下すと同時に、逃したワインを買い取って青春にケリをつけようと平介を誘った。軽くいなしたつもりの平介だったが、それがとんでもない黄金強奪ゲームの始まりになるとは全く予想もしていなかった……

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『チーム・バチスタの栄光』シリーズを通して活躍する田口医師らの大学病院が付属している東城大学や、既刊の作品で重要な役割を担った「あの人」たちも顔を見せるなど、シリーズをお読みの方にも嬉しい遊びが随所に用意されています。是非探してみてください。

(2007年10月5日)
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