優美なり雅楽の名推理
戸板康二『劇場の迷子』
《中村雅楽探偵全集4》

 一か月遅れで、皆様もうしわけございません。
《中村雅楽探偵全集4》『劇場の迷子』をお届けします。
 滋味溢れる雅楽の謎解きも終盤にさしかかってきました。
 第4巻は、歌舞伎座で迷子になった能楽師の一人息子が巻き込まれた出来事の顛末を描く表題作「劇場の迷子」。女形と舞踊家の弟子との恋模様にまつわる「家元の女弟子」といった名編を含む28編を収録しています。
 今回は、昭和52年〜平成3年の戸板康二晩年の作品群にあたります。第5巻が長編のため、雅楽ものの短編としてはひとまず最後になります。

 これまで刊行予告として、『劇場の迷子』は26短編ということでお知らせしてきましたが、刊行間近になって新たに「元天才少女」「むかしの弟子」の二編が新たに加わりました。今回加わった二編とも“雅楽の弟子”にまつわる内容で、何か因縁めいたものを感じます。
 ますます味わい深くなる雅楽の粋な名推理をご堪能あれ!

 次回はいよいよシリーズ最終巻『松風の記憶』をお贈りします。
 生涯たった3本の長編しか遺さなかった、戸板康二が贈る雅楽ものの2長編。叙情豊かな『松風の記憶』、歌舞伎界ではなく小劇団のとある事件の顛末を描く『第三の演出者』を収録。豊富な資料を併録してお贈りいたします。お楽しみに。

(2007年10月5日)

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