クリスティが絶賛した英国本格の技巧派が贈る
悪魔はすぐそこに
D・M・ディヴァイン/山田蘭訳

 パズラーの極意を知り尽くした作者のテクニシャンぶりを堪能できる秀作

――法月綸太郎氏の解説より

 アガサ・クリスティやアントニイ・バウチャー、アントニイ・バークリーら、そうそうたる面々にその実力を認められ、代表作『兄の殺人者』、『五番目のコード』などで本格ミステリファンの心をわしづかみにした英国ミステリ作家D・M・ディヴァインの本邦初訳作『悪魔はすぐそこに』をご紹介します。
 巧妙なミスディレクション、伏線の妙、端正な構成――高度な技術によって形作られたミステリの骨格に、成長小説やロマンスの要素が盛り込まれているため、極めて完成度の高い本格でありながら、大変読みやすいというディヴァイン作品の特長が堪能できる『悪魔はすぐそこに』は9月の発売です。どうぞお楽しみに。

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 ハードゲート大学の若き数学科講師ピーターは、チェスの最中に亡父の友人である同僚のハクストンから助力を請われた。横領の嫌疑を掛けられて免職の危機にあるというのだ。しかし教授たちによる審問の場で、ハクストンは脅迫めいた言葉を口にしたのち、不審死を遂げる。次いで図書館で学生が殺され、名誉学長の暗殺を仄めかす脅迫状が学長宛に舞い込んだ。彼は式典のために近く大学を訪れる予定だが……。ハクストンは、自分が失職するようなことがあれば、高名な数学者であったピーターの父を狂死に追い込んだ、女子学生の死の真相を明かしてやると仄めかしていた。彼女は非合法の堕胎手術を受けて死亡し、ピーターの父こそが彼女の情人であると疑われていたのだ。もしかして教授たちの中に真犯人が? だが、ハクストン殺しの疑いをかけられたのはピーターの婚約者ルシールだった。ハクストンを忌み嫌っていた彼女の抱える事情とは? ルシールの同居人カレン、聡明な法学部長ラウドンらとともに、ルシールへの嫌疑を晴らすべく事件を追うピーターだが……。

(2007年8月6日/2007年9月5日)
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