決して日が暮れてから読まないこと……
〈魔使いシリーズ〉第3弾
『魔使いの秘密』
ジョゼフ・ディレイニー/金原瑞人・田中亜希子訳
創元ブックランド 2月刊行

 その地方のもっとも高い場所は、謎につつまれている。
 言い伝えによれば、そこでひとりの男が大嵐の中、
 世界を震えあがらせた悪を封じて死んだという。
 そのあと、ふたたび氷の時代がやってきて、
 去ったとき、山の形や平地の町の名前まで変わっていた。
 今、丘の上にある、そのもっとも高い場所には、
 昔起こったことを示す痕跡は残っていない――
 名前をのぞいて。
 その場所は「ウォードストーン」と呼ばれている。


『魔使いの秘密』

 ぼくはトム魔使いの弟子だ。師匠の魔使いと、魔女の女の子アリスと一緒にチペンデンの魔使いの家で暮らしている。
 ところが冬になったとたん、師匠は居心地のいいのチペンデンの家から、アングルザーク高原にある冬の家にうつるという。アングルザークは、なにかといやなうわさのある土地だ。しかもアリスは一緒に住めないから、よそへやられてしまうらしい。
 暗くて陰気な冬の家で待っていたのは、だれもいないさむざむとした部屋部屋(チペンデンではボガートがいつも料理をしてくれていた)。そして広大な地下室には、魔女やボガートを封じ込めた穴があった。おまけに師匠のもと恋人で、ラミア魔女のメグも冬の家にいるらしい!
 一方、師匠の出来損ないの元弟子モーガンが、このアングルザークの地で、冬の魔王ゴルゴスを目ざめさせようとしていた……。

 師匠魔使いの秘密に迫る、いよいよ面白い〈魔使いシリーズ〉第三弾。


『魔使いの呪い』

 ぼくはトム。魔使いに弟子入りして半年ほどたつ。修業は大変でまだまだ半人前だけど、なんとかやっている。
 そんなある日、人の血の味をおぼえたボガート、リッパーを退治してくれという依頼があった。被害者はなんと師匠である魔使いのお兄さん。  師匠の手を借りずになんとぼくひとりで無事にボガートは退治したものの、こんどは病み上がりの魔使いが、古代の悪霊ベインが巣くう大聖堂の町プライズタウンに向かうと言い出した。
 だがそこには魔使いをつけ狙う、冷酷な魔女狩り長官が……。そして魔女狩り長官に捕らえられた魔女たちのなかにぼくが見たのは、たったひとりの友だちアリスの姿だった。
 古代のおそろしい悪霊ベインと魔使いを憎む魔女狩り長官、ふたつの敵を相手に、魔使いとトムはどう戦う? そして捕らえられたアリスの運命は?

 七番目の息子の七番目の息子トムの、冒険と成長を描く、ちょっぴりこわくて止められない〈魔使いシリーズ〉第二弾。
上橋菜穂子解説。


『魔使いの弟子』

 ぼくはトム、7番目の息子である父さんの7番目の息子だ。
 父さんは農場をやっているけど、農場を継ぐのは一番上の兄さんだけ。それ以外はみんな手に職をつけて、ひとりだちしなくてはならない。でも7番目ともなると、いいかげん弟子入り先も底をついてしまう。そこでぼくが弟子入りすることになったのは魔使い。おそろしいボガートや魔女、ゴーストから人々を守る危険で孤独な仕事だ。母さんは、ぼくには特別な能力があるのだから、立派な魔使いになれるって言うけど、本当だろうか……
 確かにぼくには、他の人には見えない、色々な気味の悪いものが見える。ろうそくの明かりがないと寝られないくらいだ。だから兄のジャックは、こんなに怖がりのぼくが、魔使いになんてなれるはずがないと言うんだ。
 とにかく、ぼくは魔使いに弟子入りできるかどうか、試してみることになった。
 魔使いとぼくが最初に着いたのは、うらさびれた炭坑町ホーショー。なんだか暗くて陰気なところだ。ぼくの最初の試験は、通りのはずれにある幽霊屋敷で、ひとりぼっちでひと晩過ごすこと。そして魔使いがぼくに告げたのは「誰がきても玄関をあけないこと」「夜中の12時ぴったりに地下室におりていくこと」「ろうそくの火だけは消さないこと」の3つだった。
 ひとりになって、寒いし、変に目がさえて眠れずにいると、地下室で物音がした。だれもいないはずの地下室でだれかが地面を掘っている……

 怖がりの少年トムは、無事に魔使いになることができるのか?
 どきどき恐くて、わくわく面白い。〈魔使いシリーズ〉第1弾。

(2007年8月6日/2008年2月5日)