CWA最優秀長編賞受賞作
『病める狐』〈上下〉
ミネット・ウォルターズ/成川裕子訳
(2007年7月刊行)

 デビュー長編『氷の家』でCWA(英国推理作家協会)最優秀新人賞、『女彫刻家』でMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長編賞、そして『鉄の枷』でCWA最優秀長編賞を受賞と、名だたる賞を総なめにし、原在位に至るまで欧米では絶大な人気を誇るミネット・ウォルターズ。その実力は、これまで訳出された作品の質からも明らかです。

 そのウォルターズが2002年に発表し、『鉄の枷』以来2度目となるCWA最優秀長編賞に輝いたのが、本書『病める狐』です。一作ごとに主人公や舞台を変え、緻密な作品世界を作り上げる彼女が今回選んだのは、ドーセット州の小さな寒村、シェンステッド。避暑の季節は別荘地としてにぎわうが、冬場はひと握りの住民だけが静かに暮らす、そんなコミュニティ。
 この村に、いつの頃からか、ひそかに死と暴力がはびこり始めます。
 夜ごと、狩られていく野生の獣。
 村いちばんの旧家、ロキャー−フォックス家の老婦人エイルサの不審死。
 村内でささやかれ始める不穏な噂と中傷の電話。
 雑木林を占拠する、トラヴェラー(移動生活者)の一団。
 ……そのすべてを操っているのは、正体不明の危険な人物、フォックス・イーヴルと名乗る男。
 彼の正体は何者なのか? そして、その狙いとは?
 すべてが明かされるのは、クリスマスの翌日、12月26日――

 ミネット・ウォルターズ『病める狐』は2007年7月27日発売予定です。


 また、今月は同時に、2006年度のCWA最優秀長編賞受賞作アン・クリーヴス『大鴉の啼く冬』も刊行されます。
 冬のシェトランド島を舞台に、女子高校生殺害事件の真相を追うペレス警部の活躍を描いた、重厚な本格ミステリの傑作です。こちらもお楽しみに。


(2007年7月5日)