好評 戸板康二《中村雅楽探偵全集》
第三巻『目黒の狂女』

 中村雅楽翁の活躍する名推理譚、第三巻。
《中村雅楽探偵全集》の最新刊、『目黒の狂女』いよいよ刊行です。今回は、昭和50年代を中心に執筆された作品群。前二冊の『團十郎切腹事件』『グリーン車の子供』ほどの派手な事件や作品はありませんが、滋味ある23作が収録されています。

 雅楽の相方である竹野記者が、講演会の帰りに遭遇した不思議な女性の謎をとく「目黒の狂女」や、淀君が大坂の陣の際に、なぜ生き延びなかったのかを推理する「淀君の謎」、日本推理作家協会が発行する『推理小説年鑑』に収録された「楽屋の蟹」「俳優際」「木戸御免」など名編の数々が楽しめます。
 ひとつひとつの事件は地味かもしれませんが、著者が歌舞伎界や演劇界の日常を、味わいある筆致で描いています。ぜひご堪能ください。

今後発売の《中村雅楽探偵全集》収録作品
◆第四巻 劇場の迷子 26篇
日曜日のアリバイ、灰、なつかしい旧悪、祖母の秘密、弁当の照焼、銀ブラ、不正行為、写真の若武者、機嫌の悪い役、いつものボックス、劇場の迷子、必死の声、芸談の実験、かなしい御曹司、家元の女弟子、京美人の顔、女形の愛人、一日がわり、荒療治、市松の絆纏、二つの縁談、おとむじり、油絵の美少年、赤いネクタイ、留め男、演劇史異聞

◆第五巻 松風の記憶 長編2本
松風の記憶、第三の演出者

(2007年6月5日)

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