映画とは違い、『吸血鬼ドラキュラ』、『フランケンシュタイン』ときても狼男がいない、と思われてきた怪奇幻想小説の世界ですが、かの「人狼」が登場する傑作が、いよいよ創元推理文庫に登場します。
どのくらい傑作かというと、H・P・ラヴクラフトによる《クトゥルー神話》や、トールキンの傑作『指輪物語』、さらには近頃、第一部『ピラミッドからのぞく目』が邦訳された、シェイ&ウィルソンのカルト伝奇小説《イルミナティ三部作》と並び称され、読む者の心を支配する、とまで評されるほど。
それが、ジャック・ウィリアムスン『エデンの黒い牙』。
一九四八年にアメリカで刊行されてから、半世紀を超える時を経ての邦訳です。
この危険な一冊に、浸ってみませんか?
実は日本でも、本書は知る人ぞ知る作品でした。
それは……
訳者が一時、作家・半村良氏の助手を務めていたことを、御存知の読者もいらっしゃることでしょう。
その半村氏の傑作伝奇小説『戸隠伝説』(河出文庫)の主人公・井上昭の、翻訳家としての筆名が「野村芳夫」。作中、彼が訳したいと述懐している、いくつかの英米怪奇小説の中に挙げられているのが、「ジャック・ウィリアムスンの人狼小説」……そう、本書なのです。
なお、解説は、訳者と親交の深い荒俣宏氏。
本作をめぐる時代背景や、幻想文学とオカルト結社との関わりを、掘り下げています。
ことに興味深いのは、本作の秘めるパワーに心酔し、カルトの聖典にしてしまった男がいたこと。
その男、アラン・パーソンズについても、詳しく語られています。
くれぐれも、お読みになるときは、御注意を。
あなたの中に眠っている「内なる野獣」が覚醒し、いつしか変身しているかもしれませんよ。