ドイツ・ミステリ大賞受賞の傑作シリーズ登場
アンネ・シャプレ『カルーソーという悲劇』

 2007年5月末刊のアンネ・シャプレ『カルーソーという悲劇』は第2作と第5作が、ドイツ・ミステリ大賞を受賞している傑作シリーズ第1弾です。この作品が登場した時、本国ドイツでは、やっとドイツ・ミステリが英米作品に追いついたと、絶賛の嵐だったとか(かなりのコンプレックスがあったようです)。

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 主人公は、フランクフルトの大手広告代理店でコピーライターとして活躍していたのをキッパリやめて田舎暮らしを選び、業界暴露本を執筆中のパウル。
 田舎暮らしを選んだとはいっても、時々フランクフルトの都会の風にあたりに行く彼の親しい友人は、個性的な女性検事・カレン・シュタルク(まさにフランクフルト的な存在?!)。
 パウルの家の周辺では、放火と馬殺しが頻発していた。そして、ある日、パウルが惹かれている女農場主の家で、彼女の夫が殺されて食肉用冷蔵庫に吊されているのが発見された。犯人は彼女なのか?
 パウル、コジンスキー警部、カレンの魅力的なトリオが行き着く真相とは……?

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 のどかな田園風景とフランクフルトという都会の雰囲気が絶妙にミックスされた魅力的なシリーズの開幕です。どうぞお楽しみに。ちなみにカルーソーというのは、あのイタリアのオペラ歌手、名テノールの名前です。

 著者アンネ・シャプレは1958年生まれ。大学で数学と神学を修め教職を経て、バー勤め、フィットネス・クラブのトレーナー、証券取引所勤めなど職を転々とした、というふれ込みで登場したのですが、それは真っ赤な嘘。
 実は本名がコーラ・シュテファンという1952年生まれの博士号を持つ政治学者で、現代史家というのが真実の姿です。ジャーナリスト、編集者、キャスターなどと、活動も多彩で専門分野の著作も多い人物なのでした。
 現在は3匹の猫とともにフランクフルト、オーバーベッセン、そして南仏の3か所を行ったり来たりして暮らしているのだそうです。動物好きな面が作品にもよく出ていて、犬も猫も、さりげないけれどきわめて魅力的に描かれていますので、そのあたりにもご注目ください!

(2007年4月5日/2007年5月7日)

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