〈永遠の戦士〉ホークムーンの果てしなき戦いを描く
〈ルーンの杖秘録〉〈ブラス城年代記〉

『ギャラソームの戦士』
マイケル・ムアコック/井辻朱美訳

かくして大地は年ふり、起伏はゆるやかとなって、齢のきざしを見せ、さながら晩年にあるもののように、突飛で奇矯なふるまいをみせるようになった。

――ルーンの杖秘録

この歴史果つるとき、さらなる歴史の幕あがるべし。そは前幕の人物が、さらにおそろしく奇怪な経験を分かちもつ物語。かくてふたたび、湿原カマルグなる古きブラス城こそその中心とならん……

――ブラス城年代記

 いくつもの世界が重なり合い、隣り合って存在する多元宇宙。そのなかで、世界を超え、時間を超えて幾多の分身として存在する〈永遠の戦士〉、エルリック、エレコーゼ、コルム、ホークムーン……。


『ブラス伯爵』〈ブラス城年代記1〉
井辻朱美訳


〈ルーンの杖秘録〉の物語より、五年の歳月がすぎた。暗黒帝国との壮絶な戦いの戦場となったカマルグの街も再建され、ホークムーンは妻イッセルダとのあいだにマンフレートとヤルミラのふたりの子どもをもうけた。
 だが、いつからかホークムーンの周囲に、カマルグの湿原で、死んだはずのブラス伯その人の姿を見たという噂が広がりはじめた。ホークムーンを知らず、あまつさえ彼を裏切り者と呼ぶ、このブラス伯はいったい何者なのか。
 一方、フラーナ女王の治世の下で壊滅したと思われていた暗黒帝国の残党が、ふたたび不穏な動きを見せはじめていた。
《永遠の戦士》の集大成ともなる“混沌”と“法”の壮大な三部作、ここに開幕。


『ギャラソームの戦士』〈ブラス城年代記2〉
井辻朱美訳


 次元航行装置の破壊により、世界は変貌してしまった。
 今の歴史によれば、ロンドラ会戦から五年間、ホークムーンは狂気にとらわれていたのだ。愛する妻イッセルダとふたりの子供もまた、狂気ゆえの幻想であったというのか?
 そんな彼のもとを、ある日カティンカと名乗る女性が訪れる。どこかに生きているはずのイッセルダを求め、ホークムーンはカティンカと共に旅に出る。次元の裂け目を抜け、ギャラソームの女戦士イリアンへ転生するホークムーン。そこで彼を待ち受けるものは?
 三部作いよいよ佳境に。


『タネローンを求めて』〈ブラス城年代記3〉
井辻朱美訳


 奇怪な冒険の末、妻イッセルダを取りもどしたホークムーン。だが子どもたちは行方がしれない。
 そんなとき、《ルーンの杖》のしもべオーランド・ファンクがブラス城を訪れ、今や《多次元宇宙》では、永遠と呼べるほどの長時間にわたり、多くの次元の運命を決することになる大戦が起きているのだと告げる。
 この世ならぬ地タネローンを目指し、心ならずも旅に出たホークムーンは、タネローンを探す不思議な船の上で、ついに自らの分身、エルリック、エレコーゼ、コルムら《永遠の戦士》たちに出会う。そしてタネローンで戦士たちを待っていたのは……
《永遠の戦士》の永き戦いに終止符を打つ、シリーズ最終巻。


『額の宝石』〈ルーンの杖秘録1〉
深町眞理子訳


 魔術と科学が入り混じった不気味な世界。別名「暗黒帝国」と呼ばれるグランブレタン帝国が、相争っていたヨーロッパの他の国々を征服、次第にその勢力下におさめつつあった。
 そんなグランブレタンの支配に反旗を翻した人物がいた。ケルンの若き公爵、ドリアン・ホークムーン。だが、奮戦空しくあえなく捕らえられ、帝国に背けば彼の脳を喰い尽くす生きた宝石を額にはめられる。そして遣わされたさきはカマルグ国。乱世の英雄ブラス伯爵が治めるその地は、いまだ帝国に従わず独立を保っていた。
 カマルグ国に潜入し、ブラス伯爵のひとり娘イッセルダを誘拐し、人質としてグランブレタンに連れてくること、それがホークムーンに課せられた使命だった……


『赤い護符』〈ルーンの杖秘録2〉
深町眞理子訳


 暗黒帝国グランブレタンの魔術でひたいに埋め込まれた宝石の支配から、やっと解き放たれたホークムーン。晴れて婚約者、カマルグのイッセルダのもとに向かう彼の前に、またしても暗黒帝国の軍団が立ちふさがる。
 亡霊人の棲む都市、機械仕掛けの不気味な怪物,そして魔法の護符を持ち、《狂える神》を名乗る男。敵か味方か、ホークムーンの身辺にあらわれる《黒玉と黄金の戦士》は、自らをすべての運命を司る《ルーンの杖》に仕える存在と言い、ホークムーン自身も《ルーンの杖》のしもべなのだと告げる。はたしてその真意は?


『夜明けの剣』〈ルーンの杖秘録3〉
深町眞理子訳


 暗黒帝国グランブレタンとの戦いの末、束の間の平和を勝ち得たカマルグ国。だが、その休息の時も長くは続かなかった。時空を超える力をもつ不思議な指輪が存在することがわかったのだ。暗黒帝国にその指輪を渡してはならない。ホークムーンとダヴェルクは、先手を打たんと暗黒帝国に潜入する。指輪の正体を知る謎の老人を見つけなければ。だが、またしてもルーンの杖が彼の運命に介入する。
 魂を奪う怪物、血を吸う化物、そして海賊に支配された街。ホークムーンは恐るべき力をもつ《夜明けの剣》を手にし、カマルグ国を救うことができるのか。


『杖の秘密』〈ルーンの杖秘録4〉
深町眞理子訳


 幾多の困難と危険を乗り越え、やっとの思いで《夜明けの剣》を手に入れたホークムーン。彼は《ルーンの杖》の指示に逆らって、あえて故郷カマルグに針路をとる。だが、突如あらわれた怪物に行く手を阻まれ、船は難破、否応なしに《ルーンの杖》を探すことに……。
 一方、暗黒帝国グランブレタンでは、ブラス城を異次元世界から引き戻す方法が発見されつつあった。大規模な遠征の陰で、密かに進行する密約と陰謀。《ルーンの杖》を手にする者は? 暗黒帝国の覇権の行方は? そして最後の決戦に勝利するのは? 四部作、ついに完結。

(2006年6月10日/2007年4月5日)