修道女フィデルマ登場!
ケルト・ミステリ
〈修道女フィデルマ〉シリーズ第1弾

蜘蛛の巣〈上・下〉
ピーター・トレメイン/甲斐萬里江訳

 緑豊かなアラグリンの谷で、その地を支配する氏族の族長エベルが殺された。現場にいたのは血まみれの刃物を握りしめた若者モーエン。犯人は彼に間違いない。事件はごく単純なはずだった……。だが、族長の妻の要請で都から派遣されてきた裁判官フィデルマは、この事件に納得できないものを感じていた。

 殺人現場で捕らえられた青年は、目も見えず、耳も聞こえず、口もきけなかったのだ。そんな彼が本当に、族長と、幼い頃から育ててくれた母親同然の女性を殺したのだろうか?

 フィデルマは、同行した修道士エイダルフと共に、さっそく捜査を開始する。

 没落した高貴な一族の血をひく、族長の誇り高き未亡人、族長の後継者に指名されていたまだ若い娘、ローマ・カソリックの教えを厳しく説く神父、年老いたドルイドの隠者……。そして、フィデルマをあざ笑うかのように、次なる殺人が。

 白日のもとに次々とあばかれる、アラグリンの人々の秘められた真実。果たして平和な谷に巣くう恐るべき蜘蛛の正体は?

 古代の雰囲気を色濃くたたえる7世紀のアイルランドを舞台に、マンスター王の妹にして、裁判官・弁護士でもある美貌の修道女フィデルマが、その明晰な頭脳で次々と事件の糸を解きほぐしてゆく。

(2006年9月5日/2006年10月5日)
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