焼死した親友が、携帯から語りかけてきた!
《しゃばけ》シリーズの著者が贈る、初の現代小説
畠中恵『百万の手』


 僕、音村夏貴はときどき過呼吸の発作を起こす14歳。ある日、親友の正哉が目の前で焼死してしまった。取り残された両親を助けるために、燃えさかる炎に包まれた自宅へと飛び込んでいったんだ。とっさにつかんだ携帯電話だけを、僕の手に遺して。
 どうして……。悲しみにくれる僕の耳に、慣れ親しんだ声が聞こえてくる。死んだはずの正哉が、遺された携帯電話から語りかけてきたんだ!

「どう考えてもおかしいんだよ」

 巻き込まれたあの火事は不審火だった!? 正哉と彼の両親はなぜ死ななければならなかったのか。携帯から語りかける正哉とともに、僕はその真相を探る。
 突然失ってしまった父親や親友。うまくいかない母親との関係。過酷な現実を目の当たりにしても、懸命に生きる少年。その瑞々しく繊細な心の煌めきを見事に描いた、青春ファンタスティック・ミステリの傑作!

《しゃばけ》シリーズの著者、畠中恵が贈る初の現代小説。支えあい、ひたむきに歩く人達に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

*本書は2004年に、東京創元社の叢書〈ミステリ・フロンティア〉の1冊として刊行した作品の文庫版です。文庫化にあたり、坂木司先生の解説を巻末に収録しました。

(2006年8月7日)