ヒロイック・ファンタジーの傑作4部作

〈ルーンの杖秘録〉
マイケル・ムアコック/深町眞理子訳

そうして地球は老い、その相貌は老熟して、年齢のあとを示し、その性向は、ひとの晩年の姿をそのままに映して、気まぐれに奇矯になっていった。

――ルーンの杖秘録 

 いくつもの世界が重なり合い、隣り合って存在する多元宇宙。そのなかで、世界を超え、時間を超えて幾多の分身として存在する〈永遠の戦士〉。エルリック、エレコーゼ、コルム、ホークムーン……。

 この〈ルーンの杖秘録〉シリーズは、その〈永遠の戦士〉のひとり、ドリアン・ホークムーンを主人公としている。

 舞台は未来の地球ともとれる、魔術と科学が入り混じった不気味な世界。別名「暗黒帝国」と呼ばれるグランブレタン帝国が、相争っていたヨーロッパの他の国々を征服、次第にその勢力下におさめつつあった。動物を模した奇妙な仮面をかぶり、人前に素顔をさらすことを極端に厭う、グランブレタンの貴族たち。爛熟し狂気におかされた文化と、卓越した魔術と科学の混交……。


『額の宝石』


 そんなグランブレタンの支配に反旗を翻した人物がいた。ケルンの若き公爵、ドリアン・ホークムーン。だが、奮戦空しくあえなく捕らえられ、帝国に背けば彼の脳を喰い尽くす生きた宝石を額にはめられる。そして遣わされたさきはカマルグ国。乱世の英雄ブラス伯爵が治めるその地は、いまだ帝国に従わず独立を保っていた。
 カマルグ国に潜入し、ブラス伯爵のひとり娘イッセルダを誘拐し、人質としてグランブレタンに連れてくること、それがホークムーンに課せられた使命だった……


『赤い護符』


 暗黒帝国グランブレタンの魔術でひたいに埋め込まれた宝石の支配から、やっと解き放たれたホークムーン。晴れて婚約者、カマルグのイッセルダのもとに向かう彼の前に、またしても暗黒帝国の軍団が立ちふさがる。
 亡霊人の棲む都市、機械仕掛けの不気味な怪物,そして魔法の護符を持ち、《狂える神》を名乗る男。敵か味方か、ホークムーンの身辺にあらわれる《黒玉と黄金の戦士》は、自らをすべての運命を司る《ルーンの杖》に仕える存在と言い、ホークムーン自身も《ルーンの杖》のしもべなのだと告げる。はたしてその真意は?


『夜明けの剣』


 暗黒帝国グランブレタンとの戦いの末、束の間の平和を勝ち得たカマルグ国。だが、その休息の時も長くは続かなかった。時空を超える力をもつ不思議な指輪が存在することがわかったのだ。暗黒帝国にその指輪を渡してはならない。ホークムーンとダヴェルクは、先手を打たんと暗黒帝国に潜入する。指輪の正体を知る謎の老人を見つけなければ。だが、またしてもルーンの杖が彼の運命に介入する。
 魂を奪う怪物、血を吸う化物、そして海賊に支配された街。ホークムーンは恐るべき力をもつ《夜明けの剣》を手にし、カマルグ国を救うことができるのか。


『杖の秘密』


 幾多の困難と危険を乗り越え、やっとの思いで《夜明けの剣》を手に入れたホークムーン。彼は《ルーンの杖》の指示に逆らって、あえて故郷カマルグに針路をとる。だが、突如あらわれた怪物に行く手を阻まれ、船は難破、否応なしに《ルーンの杖》を探すことに……。
 一方、暗黒帝国グランブレタンでは、ブラス城を異次元世界から引き戻す方法が発見されつつあった。大規模な遠征の陰で、密かに進行する密約と陰謀。《ルーンの杖》を手にする者は? 暗黒帝国の覇権の行方は? そして最後の決戦に勝利するのは? 四部作、ついに完結。

(2006年6月10日/2006年12月5日)