ジュニアブランド界に蠢く男たち、
そして揺れ動く女たち。
永井するみ『さくら草』

 本社を代官山の一等地に持ち、旗艦店を表参道にオープンさせたジュニアブランドの雄・プリムローズ。「子どもでも、カシミア、スエード、シフォンなど大人同様の高級素材を用いたウエアが着たい!」というローティーンのニーズをうまく掴み急成長を遂げた。高級素材を用いつつ、10代特有のかわいらしいデザインに仕上げ、子どもだけでなく大人の女性をも虜にするほどだ。

 一方で、新作ファッションショーや各種イベントで、プリムローズの服を着た女の子を一心不乱に撮影する男たちも頻繁に出没するようになる。彼らはプリムリーズ・ロリータ、通称“プリロリ”と呼ばれ、プリムローズの服を着用した女の子の写真をネット上で売買するなど、異常な行動もクローズアップされていく。
 そうした中、一人の女の子の遺体がラブホテルの駐車場で発見され――

 デビュー長編『枯れ蔵』で農業、『樹縛』で林業と住宅メーカー、『ミレニアム』でコンピューター業界、『大いなる聴衆』では音楽と、多方面に亘る分野を舞台とした重厚なミステリを手掛けてきた永井するみ。今回の最新長編『さくら草』の舞台はアパレル界。しかも、近年注目を集めているジュニアブランドを取り上げている。近年、大人向けブランドも続々とジュニアブランド用のレーベルを立ち上げ、親子で同様のファッションを楽しめるようにしているほど。少子化が叫ばれ、子ども一人当たりにかけるお金の額が年々増えるいま、各界からの注目度も高いものがある。

 主人公は二人。プリムローズでゼネラルマネージャーを務める、日比野晶子。プリムローズのブランドイメージを守るため奔走する。もう一人は、江東署少年課の刑事・白石理恵。ファッションに疎い男性刑事たちの補佐として事件に関わる。二人の視点から暴かれる事件の真相、揺れ動く女たちの姿を描きます。著者渾身の長編ミステリ、いよいよ登場です。お楽しみください。

カバー用に本作をイメージしたコサージュを
MEフラワーデザインさんに制作いただきました。

(2006年4月5日/2006年5月8日)
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