〈グレイス&フェイヴァー〉シリーズ第3弾
ジル・チャーチル『闇を見つめて』

 〈主婦探偵ジェーン〉と〈グレイス&フェイヴァー〉、ふたつのシリーズでご好評をいただいているジル・チャーチル。『闇を見つめて』は、〈グレイス&フェイヴァー〉シリーズの第3作です。

 ウォール街の株価暴落に始まる世界大恐慌のあおりを食い、一夜にして金持ち身分とはおさらばすることになったロバートとリリーのブルースター兄妹。慣れない貧乏生活に悪戦苦闘していた彼らでしたが、会ったことすらなかったホレイショー大伯父の奇妙な遺言に従って、ヴォールブルグの町で暮らすことになります(『風の向くまま』参照)。
 その後も、生活費を得るために企画した会費制パーティで騒動に巻きこまれたりしましたが(『夜の静寂に』)、ふたりは持ち前の快活さと機転でなんとか危機を乗り越えます。

 第3作となる本書『闇を見つめて』で語られるのは、1932年7月のできごと。兄妹が〈グレイス&フェイヴァー〉コテージに越してきてからもうすぐ1年が経とうという頃合いです。いっこうに回復する余地のない世界的な不景気は、平和なヴォールブルグの町にもひたひたと押し寄せており、人々は様々なやりくりを重ねて、なんとか日々を暮らしています。
 そんな周囲を見て、リリーは、これまで自分たちが(やむをえないこととはいえ)金持ちのふりをしてきたのは正しいことだったのだろうか、町の人々に打ち明けるべきなのだろうか、と思い悩みます。
 いっぽう、兄のロバートは、敷地内にある古い氷貯蔵小屋を解体しようとして、その中からミイラ化した身元不明の死体を見つけてしまいます。被害者の身元を突き止めようとするロバートですが、当然調査は難航します。
 さらに、リリーが新しく加入したヴォールブルグの婦人会でも、メンバーの身内が殺される事件が起こってしまうのですから、さあ大変。

 いくつもの難題を抱えた貧乏兄妹、今回も無事に問題解決といくのでしょうか?

(2006年3月6日)
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