第1回鮎川哲也賞受賞作『殺人喜劇の13人』で登場して以来、数多の不可能犯罪に挑みつづけた名探偵・森江春策。彼は、いかにして名探偵への道を歩んだのか? 「ミステリーズ!」誌上で好評を博した短編連作《森江春策クロニクル》に、書き下ろし中編「幽鬼魔荘殺人事件と13号室の謎」を加えた計5編を収録。それぞれの短編に凝らされた趣向と、鮮やかな解決をお楽しみください。
特別付録として、今まで紹介された事件を時系列順に整理した「森江春策事件簿」も併録。
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探偵小説が大好きな小学生、森江春策は図書館からの帰り道、妖しいキネオラマに誘い込まれて、何者かに捕らわれてしまう。壁を自在に這いまわる怪人、謎の美少女、奇妙な二人組……あたかも探偵小説のような世界に迷い込んだ春策少年は、物語の名探偵のように窮地を脱することができるのか?【少年探偵はキネオラマの夢を見る】
探偵小説家志望の青年が住むごく普通のアパート〈雪間荘〉に、一人の中学生が引っ越してきた。森江春策と名乗る彼も、またごく普通の少年だったが、なんと引っ越し先は「存在するはずのない」13号室だった! やがて不気味な現象に追い打ちを掛けるかのように、その隣室から他殺体が発見される……【幽鬼魔(ゆきま)荘殺人事件と13号室の謎】
かつてある殺人事件をきっかけに、高校時代の森江春策と出会った滝儀一警部補。彼は大阪で起きた女子学生の不審な死を追う。一方、京都の大学に通う森江は、級友が話す大学生の怪死事件のあらましを聞き、そこから誰も想像し得ない結論を導き出す。大阪と京都、二都で起きたそれぞれの事件が迎える驚愕の結末とは?【滝警部補自身の事件】
バー《ファントマ》に集う面々とともに廃墟ホテルの見物に立ちあった文化部記者・森江春策は、マントルピースに鎮座する生首を発見する。否応なく事件に巻き込まれた上、翌日には取材先の蚤の市で胴体の入った木箱が発見される。しかも木箱の発送を手配したのは、被害者本人だった?!【街角の断頭台(ギロチン)】
新聞記者から弁護士に転身し、その最中にも様々な不可能犯罪と対決を果たした森江春策に、異能の天才発明家が大胆な挑戦状を突きつけた! なんと彼は、自身で発明したタイムマシンを使用して絶対的なアリバイを構築して殺人を犯したというのだ。時間、空間ともに鉄壁の不在証明に、森江春策はいかなる解答を突きつけるのか?【時空を征服した男】
そして、物語を通して読んだのちに立ち現れる驚愕の真実。是非、冒頭の第一話から通して読んで、本格の雄が仕掛けたトリックをご堪能ください。