〈邪神狩人〉タイタス・クロウふたたび!
クトゥルー神話に新境地を拓くダーク・ファンタジー開幕!

ブライアン・ラムレイ『地を穿つ魔』
〈タイタス・クロウ・サーガ〉

地を穿つ魔

『タイタス・クロウの事件簿』において、不死の魔術師や数秘術を駆使するテロリストらと死闘を繰り広げたオカルト探偵タイタス・クロウが、ついにクトゥルー眷属邪神群(CCD)と対決! 奇怪な失踪を遂げた考古学者とその甥が遺した手記の内容から、ヨーロッパ各地で頻発する異常な地殻変動の陰に邪神の存在があることを確信したクロウ。偉大な隠秘学者の父を持つ親友、アンリ‐ローラン・ド・マリニーとともに調査に乗り出すが……。

 偉大なるHPL――アメリカ有数の怪奇・幻想小説の大家、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトによって創出され、オーガスト・ダーレスによって体系化されたクトゥルー神話は、創始者ラヴクラフトの死後も、ロバート・ブロック、クラーク・アシュトン・スミスらによって書き継がれ、ホラー小説に一派を成すジャンルとして現在も多くの書き手や読者を魅惑しつづけています。

 神にも比される強大な存在に対してなすすべもない人間の絶望や、人知を遙かに超越した宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)が描かれたラヴクラフトの作品群を嚆矢として、多数の作家によって書き連ねられるうちに、徐々に新しいジャンルとの融合し、ホラー小説の枠にとどまることなく多様な進化を遂げるに至ったクトゥルー神話。ブライアン・ラムレイは、クトゥルー神話固有の宇宙史的な背景を踏まえながらも、強大かつ邪悪な存在に反撃する人間たちに焦点を当て、伝奇ファンタジーの要素をクトゥルー神話に導入したオーガスト・ダーレスに並ぶ存在として、長編作品の紹介が長らく待たれていました。

 禁忌とされる魔道書『ネクロノミコン』や『無名祭祀書』の知識を駆使して邪神に対抗するタイタス・クロウというキャラクターから、ダーレスの連作短編「永劫の探求」シリーズの主人公で、邪神の従者バイアクヘーを駆るシュルズベリイ博士や、ラヴクラフトの幻想冒険譚「銀の鍵の門を超えて」「未知なるカダスに夢を求めて」等で活躍するランドルフ・カーターを主役に据えた作品群(『ラヴクラフト全集〈6〉』収録)を連想される向きもあるでしょう。

 近年でもゲームやコミックスの題材として導入されることが多いクトゥルー神話の世界。伝奇ホラーの名手が生み出した稀代の邪神狩人タイタス・クロウと相棒ド・マリニーの活躍にご期待ください。

■関連作品
『タイタス・クロウの事件簿』
『秘神界―歴史編―』
『秘神界―現代編―』
『ラヴクラフト全集〈1〉』
『ラヴクラフト全集〈2〉』
『ラヴクラフト全集〈3〉』
『ラヴクラフト全集〈4〉』
『ラヴクラフト全集〈5〉』
『ラヴクラフト全集〈6〉』
『ラヴクラフト全集〈7〉』

(2005年11月7日)