著者渾身のライフワークが1冊に!
笠井潔
『探偵小説と二〇世紀精神
ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?』

探偵小説と二〇世紀精神

 《ハヤカワ・ミステリマガジン》誌上で7年以上も連載を続けている「ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?」。『バイバイ、エンジェル』に始まる《矢吹駆シリーズ》と同じく笠井潔先生のライフワークであるこの連載評論がまとまり、このたび弊社から刊行されることになりました。

 前半の第一部では、初期エラリー・クイーンの傑作を引きながら、ダイイングメッセージ、クローズドサークル、偽の証拠、犯人特定のロジックなど、本格ミステリを語る上で避けては通れぬ論点を正面から捉え、論じるという意欲的な展開。対して後半の第二部では、長期的スパンで見た状況論が中心になり、“ポストモダニズム”と“第三の波”など探偵小説の「流れ」を読むという構成になっています。

 巻末に収録した法月綸太郎先生との対談でも「探偵小説」という小説形式そのものについての議論から、「魔法使い」と「名探偵」についての議論。本編にも登場する「ダイイングメッセージ」や「誤配」、“第三の波”のステージ問題など非常に幅広く、熱いトークが繰り広げられています。

 これを読まずして「探偵小説」は語れない!? 読み応え十分のこの1冊を是非お楽しみください。

*本作は、『ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?』(早川書房刊)に続く第2巻にあたり、《ミステリマガジン》連載分の第31回〜第60回までを収録しています。
*連載第61回〜第90回までをまとめた『探偵小説と記号的人物(キャラ/キャラクター) ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?』は弊社より2006年7月に刊行の予定です。

●目次●
第一部 形式体系と探偵小説的ロジック

1 クローズドサークルと叙述トリック
2 探偵小説キャラクターのアイデンティティー
3 被害者とダイイングメッセージ
4 ダイイングメッセ−ジというシニフィアン
5 クローズドサークルとサスペンスの効果
6 「読者への挑戦」の方法的削除
7 犯人特定ロジックの不明確
8 ゲーテル的帰結と探偵小説の論理
9 偽の証拠という難問
10 証拠の真偽と決定不可能性
11 メタ証拠をめぐる問題(1)
12 探偵役の論理的不備と飛躍
13 作者の恣意と新しい証言
14 メタ証拠をめぐる問題(2)
15 ダイイングメッセージとメタ犯人

第二部 第三の波とポストモダニズム

16 過渡期にある第三の波
17 透明な世界の不透明化
18 人形の時代とポストモダニズム
19 探偵小説的ロジックと世界観念
20 理想と虚構の探偵小説史
21 大量生と「大きな物語」のフェイク
22 アメリカニズムと「小さな物語」
23 八〇年代と過去、現在、未来
24 謎解きと世界観念の二重化(1)
25 大量死と大量生の二〇世紀小説
26 大量生とポストモダニズム
27 第三の波の「タイムラグ(=ねじれ)」
28 探偵小説復興の二つの魂
29 謎解きと世界観念の二重化(2)
30 探偵小説とポストモダニズムの二潮流

対談 現代本格の行方(vs.法月綸太郎)

(2005年10月5日/2005年11月7日)