前向きすぎる老人探偵団の大活躍
コリン・ホルト・ソーヤー
《海の上のカムデン騒動記》

“探偵ダイエット”のすすめ!?
『殺しはノンカロリー』

 カムデンはカリフォルニア州サンディエゴにある、太平洋に面した町。景観は風光明媚で気候は一年じゅう温暖、土地柄はたいへん穏やかです。もっと も、あまりにも平穏すぎるせいか、観光客や若者はそれほど多く訪れません。いうなれば、仕事を引退した人々が、優雅な老後を送るのにはぴったりの落ち着い た町。
 コリン・ホルト・ソーヤーの書く、《海の上のカムデン騒動記》シリーズの主な舞台である高級老人ホーム〈海の上のカムデン〉は、そんな場所にあります。

 この〈カムデン〉、衣食住はもとより、娯楽・医療などの分野でも、至れり尽くせりのサービスが保証された、まさしく高級老人ホームの名に恥じぬ施設で (とくに食事の美味しそうなことといったら!)、入居者たちがうらやましくなってしまいます。万事が行き届いた環境で、気のおけない同年代の仲間たちとの んびり過ごす、人生の余暇……そこに不満など生まれるのでしょうか。

 しかし、これほど恵まれた環境にあっても、変わらぬ日常に退屈を感じてしまうのが、人間という生き物なのです。いくら年齢を重ねて相応の落ち着きを身につけたとはいえ、たまには刺激がほしくなることだってあります。

 そんなとき、身近な場所で殺人事件が起こったとしたら?

 〈カムデン〉入居者の中でも、ひときわ目立つ個性的なコンビ、小さな身体の中に人の二倍も三倍もの元気がつまっているアンジェラと、縦にも横にも大きく、性格も豪快なキャレドニアのふたりが選んだのは、素人探偵として事件に首をつっこむことでした。
 好奇心と行動力にものをいわせて、ダンディなマーティネス警部補をはじめとする捜査陣や、関係者たちに迷惑をかけたり、何度か危ない目にも遭ううちに、ふたりはすっかり探偵活動の魅力にとりつかれていきます。

 そんなアンジェラたちの暴走……おっと、活躍を詳しく知りたいかたは、書店で手に取ってみてください。愛すべきおばあちゃんたちが、愉快な言動で楽しませてくれるはずですから。

 老い――それは、すべての人に等しく訪れるもの。どんなに意地を張ったところで、年をとることは回避できないのです。だったらせめて、楽しく日々を送りたいもの。アンジェラたちを見習って……あくまで、ほどほどにですが。

●最新刊 『殺しはノンカロリー』(1994)

 美容とダイエットを求める女性客に人気のスパ〈タイムアウト・イン――休息の隠れ家〉で、従業員のひとりが殺されます。しかし、警察の捜査は遅々として進みません。しびれを切らした経営者のドロシーは、年長の友人にしてこれまでいくつもの事件を解決してきた“名探偵”アンジェラに助けを求めるのでした。
 こうして正式な(?)依頼を受けたアンジェラは、外出を渋る親友キャレドニアを説き伏せて、スパの新たな宿泊客を装い事件現場を訪れます。そこでふたりを待っていたのは、新たな事件と苦い顔の捜査陣、そしてスパ自慢のダイエット・プログラム一式でした――
 高級老人ホーム〈海の上のカムデン〉を飛び出した老人探偵団。謎解きもさることながら、ついでにちゃっかり運動に励もうとするアンジェラと、大の運動嫌いのキャレドニアの、ダイエット修行の成果にもご注目。はたしてふたりは、殺人事件とお腹まわりを、ともに“すっきり”させられるのでしょうか?


◇シリーズ既刊紹介◇

『老人たちの生活と推理』(1988)

 サンディエゴに佇む、至れり尽くせりの高級老人ホーム〈海の上のカムデン〉で、人畜無害の老婦人が殺された。いったい誰が、なぜ? 誇り高きアンジェラや、豪快な女傑キャレドニアたちは、ありあまる好奇心を満足させるべく、おっかなびっくり探偵活動に乗りだす。活気溢れる面々のしんみり可笑しい奮闘の顛末をつづる、これぞ老人本格推理の決定版!

『氷の女王が死んだ』(1989)

 誰彼なしに顎で使い、お高くとまった言動は数知れず。嫌われ者を選ぶコンテストがあればぶっちぎりで優勝したに違いない。そんな〈海の上のカムデン〉の新たな入居者、エイミーが体操用の棍棒で撲殺された。容疑者満載――だが、いくらいけすかないとはいえ、誰がそこまでしたいと思ったろう。困惑する捜査陣を尻目に、アンジェラたちは再び探偵を開始する。

『フクロウは夜ふかしをする』(1992)

 1人目は自販機業者、2人目は庭師……。お年寄りが優雅な老後を過ごす〈海の上のカムデン〉で連続殺人が発生。お気に入りのマーティネス警部補とは比べものにならない、感じの悪い刑事の鼻を明かそうと、アンジェラたちは早速行動を開始した。いくら危険だ邪魔だ迷惑だと言われたところで、もちろん思いとどまるはずもない。元気いっぱいの老婦人たちが繰り広げる、素人探偵大作戦!

『ピーナッツバター殺人事件』(1993)

 カムデンの町で、列車に轢かれて死んでいる男が見つかった。被害者は最近ここに越してきたばかりで、唯一親交があったのは〈海の上のカムデン〉の入居者たちだけ。事件性の有無を確かめるため、マーティネス警部補はアンジェラとキャレドニアに、老人ホーム内での聞きこみ調査を依頼する。大好きな警部補に直接頼まれたふたりは、いつも以上に張り切り、頼まれた範囲を大幅に越えて、事件解決のため暴走気味の探偵活動を始めるのだった。〈カムデン〉のロビーには新顔のインコがお目見えし、老人探偵団にも意外な新メンバーが加わるシリーズ第4弾。

 以上、シリーズ既刊も好評発売中です。個性豊かな面々が、〈海の上のカムデン〉とその周囲で巻き起こすてんやわんやの一部始終を、ぜひともお楽しみあれ。

(2005年6月10日/2007年10月5日)

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