記念すべき清新なデビュー長編
有栖川有栖『月光ゲーム』コミック化成る!

 有栖川有栖氏の輝かしいデビューを飾った『月光ゲーム』がコミックになりました。作画は温かい絵柄とストーリーラインに定評のある新鋭、鈴木有布子(すずきゆふこ)氏が担当。

 (株)マッグガーデン発行の隔月刊〈コミックブレイドMASAMUNE(マサムネ)〉誌に全5回連載の予定で進行中です。2005年4月発売春号の「予告編」に続いて、6月15日発売の初夏号ではいよいよ本編が幕を開けます。  詳細は下記のバナーをクリックして公式ページをご覧ください。

漫画『月光ゲーム』バナー

鈴木有布子『月光ゲーム』  春号の「予告編」では、『月光ゲーム』原作冒頭のミステリ談義や、〈江神&アリス〉シリーズ全体のプロローグでもある、語り手のアリスこと有栖川有栖と英都大学推理小説研究会メンバーとの出会いが描かれます。メンバーとはもちろん、江神二郎、望月周平、織田光次郎の3名。

(c) 2005 鈴木有布子 

鈴木有布子『月光ゲーム』
 名ぜりふ、名場面、登場人物の魅力に彩られた全編を通じても、エラリー・クイーン・フリークぶりを披露するモチさんの演説など、ミステリ心をくすぐるエピソードが凝縮されている冒頭は格別な印象を残します。

 また、幻の巨編『赤死館殺人事件』を執筆中であるという江神部長の存在感は圧倒的。“僕にとってミステリそのものの、江神二郎という人物の謎を解くために”足しげく研究会の集まりに顔を出すことになるアリスが、部長に会えただけで大学に入った甲斐があった、と終盤で述懐するのも納得です。

(c) 2005 鈴木有布子 
月光ゲーム

 お話かわって、英都大学推理小説研究会の一行が、夏合宿としゃれこんだ矢吹山キャンプ場。ここで他大学のグループと行き合わせ、総勢十七名の学生たちは数日を共に過ごすことになって……
 と本編のストーリーが展開し始める初夏号。

 原作のほうでは、大人数ならではのキャンプファイヤーや飯盒炊爨、マーダーゲームに興じる場面や、「そうだ、今日の朝は確かに生まれ変わった朝なのだ。彼女を、この美しい生き物を知ってから初めて迎えた朝なのだ」とアリスを詩人にしてしまう心情が描かれ、個性とりどりの十七名に目を配っているうちに最初の殺人事件が起こるあたりまで。  楽しかるべきキャンプは一転、とんでもない状況に直面した学生たちは、一体どうなるのでしょうか?

 原作をご存じの諸氏はビジュアル化を機に『月光ゲーム』の再評価を、コミックス先行の諸賢は活字での追体験を、どうぞお楽しみください。

(2005年4月10日/2005年6月10日)