坂木司の新シリーズがスタート!
『切れない糸』

今度の舞台は町のクリーニングやさん

 『青空の卵』『仔羊の巣』『動物園の鳥』でおなじみの坂木司。その新シリーズがいよいよ刊行されます。今回の舞台は、クリーニング店。
 ほとんどの方が利用したことのある業種かと思いますが、家庭から持ち込まれる衣類、そこにはさまざまな謎があります。例えば汚れ。どんな条件でできた汚れなのか、そして繊維の違いによってどのような処置を施すのか、受け取った段階で選択肢を迫られます。さらにクリーニング師、アイロン職人といったプロフェッショナルの仕事を経て、私たちの手元に戻ってくるのです。そんな様子を垣間見ることのできる作品が『切れない糸』です。

 主人公・新井和也、アイロン職人シゲさんをはじめ、商店街に携わる人々が活き活きと描かれている今回の作品。探偵役をつとめるのは、商店街にある喫茶店でアルバイトをする同級生・沢田直之です。コーヒーをドリップしながら、ナポリタンを作りながら和也とともに謎を鮮やかに解決していきます。

 卒業をひかえた大学生、俺、新井和也。家業は商店街によくある町のクリーニング屋さん。新井と洗いをかけた「アライクリーニング店」が屋号。年中アイロンの蒸気に包まれて育った俺は、超寒がりときている。
 そんなある日、親父が倒れた。就職も決まっていない俺は、しかたなく家業を継ぐことに決めた。おおざっぱな性格の母親、アイロン職人のシゲさん、そして長年パートとして店を盛り立てる「アライクリーニングのチャーリーズエンジェル」こと松岡さん、竹田さん、梅本さんに囲まれ、新たな生活がスタートしたんだ。
 クリーニングの集荷作業が、いまの俺の主な仕事。毎日、お得意さんの家を訪ねて、衣類を預かってくるというわけ。ところが、あるお得意さんを訪ねた俺が、受け取った衣類は……。

 人で賑わう商店街を舞台にした、人と人との繋がり、そして和也の成長を描いたハートフルなストーリー。果たしてどんな展開を見せるのか、乞うご期待です。

 著者・坂木司は、2002年に『青空の卵』でデビューした覆面作家です。
 外資系保険会社に勤める坂木司には、ひきこもりの友人がいます。鳥井真一、ひきこもっている彼を外の世界へ連れ出すために、坂木はさまざまな事件や謎を聞かせ、それを探るようにするのですが……。
 つづく中編集『仔羊の巣』と長編『動物園の鳥』を通じて、坂木と鳥井の心の交流を味わえます。この機会に、ぜひご一読を。

(2005年4月10日/2006年6月19日)