『レオナルドの沈黙』飛鳥部勝則

レオナルドの沈黙「私は遠隔のこの地にいたまま、目的の人物を思念によって殺してみせる」降霊会の最中、霊媒師によって宣言された殺人予告と、その恐るべき達成。すべての家具が外に運び出された状態の家の中で、首を吊って死んでいた男。踏み台にされたレオナルド・ダ・ヴィンチと鏡文字。第二の不可能犯罪の勃発。「さかさま」に支配された謎と、それを鮮やかに解き明かす奇矯な美形の名探偵。そして不敵な〈読者への挑戦〉――
 鮎川哲也賞受賞作家・飛鳥部勝則さん期待の新作は、飛鳥部+カー+クリスティとでも形容したくなるような、意欲に満ちた本格探偵小説です。先人の傑作に敬意を払いつつ書かれながら、なおかつそこに飛鳥部さんならではのオリジナリティが加えられた、きわめて楽しい本格ミステリに仕上がっています。怪奇色たっぷりながら、底にはなんともいえないユーモアが忍ばせてある点にも注目して戴ければ、と思います。本格探偵小説の愛好家への格好の贈物であると同時に、これまで飛鳥部作品を手にしたことのない方や、「本格の古典には、あまり詳しくないんですけど……」という方にもおそらくは読みやすく楽しんで戴ける、飛鳥部さんの新境地的作品です。
 また、本書は名探偵・妹尾悠二、初登場の作品でもあります。この探偵の活躍は以後も語られる予定ですので、どうぞ御期待ください!
(2004年8月10日)